完璧美人の私がうっかりスカートを穿き忘れた事がキッカケで恋に落ちた話
 あの騒動のキッカケになるくらいの大きな案件ならば、より慎重に仕事を進めねばならないだろう。
 ならば本当に散らかっている、というパターンだってあるかもしれない。

“それはそれで可愛いかも”

 本当に散らかってるわね、なんて言いながら二人で片付けるのは案外楽しそうだ、なんて妄想をしくすりと笑みが溢れる。


 結局、惚れてしまえばどんな彼でもいいだなんて私も随分丸くなったらしい。

 
「どうぞ」

 ドアが開かれ、促されるまま玄関に入る。

 さぁ、彼はどんな部屋に住んでいるのかと先ほどの妄想の答え合わせを期待しながら、脱いだ靴を少ししゃがんで整えた。

 立ち上がりながら振り向き、緊張もあるが少しわくわくしていた私は、それらを悟られないようになるべく平静を装って彼へと視線を向け――

「んっ」

 突然口付けられ目を見開いた。


 告白の返事代わりにした、あの重ねるだけのキスじゃない。
 まさしく“奪われた”感覚で。

「ん、んんっ」

 ビクリと私の体が強張ったことに気付いた水澄さんが目を開き、至近距離で目があった。

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