完璧美人の私がうっかりスカートを穿き忘れた事がキッカケで恋に落ちた話
 昨日買ったばかりの電子書籍を読みながら時間を潰すためだ。

“何もせず待ってるのももったいないもの”

 一瞬だけ、彼のベッドに潜り込むという選択肢も頭に過ったのだが――


「ゆっくり寝てほしいものね」

 デートならこれからも何度でも出来る。
 それにこうやって同じ空間にいながら熟睡してくれるというのは、信頼されているようで悪い気はしなかった。



 それからどれくらいの時間がたったのだろうか。
 ごそごそと寝室から物音がしたことに気付き視線をそちらへ向けると、今朝会った時より顔色のいい結翔がひょっこり顔を出す。

 
「おはよう」 
「……本当にベッドに来てくれなかった……」

 寝起きの彼に声をかけると、ぽつりとそんな呟きの返事が来て小さく吹き出した。

“恥ずかしいのね”

 拗ねてるようなセリフだが、表情からは気恥ずかしさが感じられるのでデート中に恋人を放置して寝てしまったことへの罪悪感と気まずさからの言葉だろう。

「私は気にしてないわよ?」
「俺は気にしてるんです!」

 私のフォローにわあっと言い返した彼がとぼとぼと近付き、垂れた耳と尻尾が見える気までして。

< 121 / 137 >

この作品をシェア

pagetop