完璧美人の私がうっかりスカートを穿き忘れた事がキッカケで恋に落ちた話
 自社ビルだが食堂はないため、昼は外に食べに行くか自分のデスクで取ることになる。
 そのため昼休みも残りわずかとなったこの時間ならいるかと思ったのだが、残念ながら水澄さんはいないようだった。
 
 外回りの多い営業部は基本外出ついでに食事を取ることが多いため、今日の彼もそのまま外で食事し次の得意先へ向かうのかもしれない。

 
「すみません」
「あ、はい。……て、え? 久保さん?」

 仕方なく社内に残っていた営業の男性に声をかけると、少し驚いた顔をしたその男性の頬が少し赤らみ内心うんざりとした。

「水澄さんの席を知りたいのですが」
「えっ、水澄ですか」

 私の言葉を聞き、さっきまで頬を染めていた彼の顔ががっかりしたものに変わったが、その事実には気付かないフリをして笑顔を向ける。

「先日少しご迷惑をおかけしたので」
「あ、そうだったんですか。あいつの席はあそこです、あの端」
「ちなみに昼食後戻られますか?」
「いや、確かそのまま外回りだったかと」
「そうですか」

 彼の指さした方を確認し、教えてくれた男性へお礼を言い教えられた席へと向かう。

 
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