完璧美人の私がうっかりスカートを穿き忘れた事がキッカケで恋に落ちた話
 決してやましいつもりで誘っている訳ではないが、もし彼に彼女や片想いの相手がいるのならば誤解されたくないという可能性もあるだろう。

 そう気付いた私が聞くと、慌てて水澄さんが両手を顔の前に出し、手と首を振る。

「違いますよ! いませんから、そんな人! ただ、その……」

 そして彼のそんな仕草を見てある違和感に気付いた。


「手ぶらってことは、もしかしてまだ仕事が?」
「あー、ははは。折角誘ってくださり光栄なのですが」

“ならなんであのタイミングで電話を……”

 確実に定時で終わる受付業務と違い、確かに比較的残業の多い営業部。
 わざわざ定時から30分後の時間に電話を掛けたのは、もしかしたら私の時間に合わせてくれたのかもしれないと気付き思わず口ごもった。

“定時で仕事を終え、着替えてから会社を出るなら確かに30分後くらいが丁度いいわ”

 
「わかった、じゃあ今日は向かいのコーヒーショップで。でもこのままじゃ流石に私も納得できないから、改めてお礼させてくれないかしら。借りを作るの、嫌なのよ」
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