完璧美人の私がうっかりスカートを穿き忘れた事がキッカケで恋に落ちた話

5.作られたものでもその気遣いは本物だから

「とりあえず、水澄さんの都合に合わせるから今度お詫びも兼ねたお礼はさせてくれるかしら」
「お詫びも兼ねた?」
「えぇ。借りを作ったままは嫌って言ったでしょ。だから多少高い店でも構わないわ」

 私がコーヒーを飲み干したのを見た水澄さんもカップをあおった後の事。

「だったらデートしてくれませんか」
「は?」

 彼からのその突然のその発言に唖然とした。

“デート? 私と水澄さんが?”

「というか、俺たち付き合ってる設定なのに一回もデートしないとかおかしいですし」
「え、わ、別れたことにすればいいんじゃ」
「この短期間でですか? 俺が健気に彼女を送って行ったのはみんな知ってるしそれだと久保さんが一方的に振ったことになりますけど」

 さらっと言った彼はやはりどこか可愛い顔でにこりと笑顔を向けてくる。

「もしかして脅してるの?」
「脅しだなんて。ただあの事を知ってる俺を一方的に振るよりデートする方が安全だな、とは思いますけど」
「脅してるじゃない!」

 さっきまでの人畜無害な彼から一変したことでじわりと額に冷や汗が滲むと同時に、どこか落胆した気持ちになった。
< 37 / 137 >

この作品をシェア

pagetop