完璧美人の私がうっかりスカートを穿き忘れた事がキッカケで恋に落ちた話
 ブランドスーツを着こなし穏やかな話し方をする若手副社長は女子社員から絶大な人気があった。
 副社長なのだからもちろんお金も地位持っている。

 そんな副社長から声をかけられたのが、たまたま私だったのだ。

 
『もしかして何か悩んでいたりしないかな。私でよければ相談に乗るよ』

 受付での仕事中のことだった。
 その突然の出来事に一瞬呆気にとられ反応が遅れたのも悪かったのだろう。

 いつもどんな誘いも一蹴してきたからこそ、私が反応しなかったことで満更でもないと勘違いした副社長はそれ以来会う度に下心たっぷりで『慰めてあげようか』なんてやたらと近付いてくるし、最初に声をかけられた時一緒に受付業務を担当していた同僚は取り入っただとか媚びてるだとか散々な噂を流し出す始末。
 
 そしてその日を境に受付業務が私の担当時間だけ一人体勢がデフォルトになったのだ。

 
 だが、呆気にとられ反応が遅れたのも仕方ないことだろう。
 何故なら副社長は――

「奥さんがいるじゃないのよ!」

 フーッと鼻息荒くロッカーからスカーフを取り首に巻いた私は、その勢いのままバタンとロッカーを叩くように閉めた。
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