完璧美人の私がうっかりスカートを穿き忘れた事がキッカケで恋に落ちた話
「なんなのよ、それ! 知らないわよ!?」

 硬貨を入れて、アームを動かす。
 ゲームセンターでは最も定番で王道のUFOキャッチャー。

“これ、こんなに難しいの!?”

 しかし何回やってみても、狙いが悪いのかカクレオンマスコットは持ち上がりすらしなかった。

「俺がやりましょうか?」
「えっ、い、いいわよ、私がやるわ」

 何の気なしにそう聞いてくれる気持ちは嬉しいのだが、いくら小銭だからといってこれはお金を使って遊ぶゲームなのである。

“一応水澄さんは後輩だし”

 あくまでも欲しいのは私であって彼ではない。
 このくらいのことなら甘えてお願いすればいい、という気持ちも正直言ってあるけれど。


“今日は借りを返しにきたんだもの”

 私たちの関係性で一方的に甘えるのはやはり違和感が拭えなかった私は、彼からの提案を断るべく首を左右に振った。


「まーくん、これ欲しい~」
「はいはい、これな」

 なんて会話が近くの台から聞こえてくる。

“でもあの二人は多分カップルだし”

 私と水澄さんはそうじゃない。


“あんな風に素直に言えれば、良かったのかな”

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