完璧美人の私がうっかりスカートを穿き忘れた事がキッカケで恋に落ちた話
 私が取り入っただとか手を出したとかの噂は、あくまで相手を弄んでいるというものであり、真剣なお付き合いとなれば話は別だ。
 彼と付き合っているという噂はすでに流れ始めていたようだし、何より真剣に付き合っている相手がいるという大義名分は下心でワンナイトを狙うような相手を牽制するには十分。

 もしこれが水澄さんでなければ、今日こそ食事の後に誘われるかも、なんて邪推したものだが――

 
“中学生デートの水澄さんよ?”

 年齢的にはそんな下心があってもおかしくないほど大人な私たちだが、どうしてもそんな下心と彼のイメージ一致しないのは、私がうっかり絆されているのかもしれない。
 それどころか、この宣言は私を守るためのものかもしれない、だなんて。

“いや、流されるの早すぎでしょ!”

 そんなお花畑に行きそうな思考を振り払うように慌てて頭を左右に振り、気を引き締めるために自身の両頬を軽く叩く。

 
「……何アレ、ラブラブだって宣言なの?」

 そんな同僚の呆れたような呟きを聞きながら、頬が熱く感じるのはさっき叩いたからだから、と心の中で繰り返した。
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