完璧美人の私がうっかりスカートを穿き忘れた事がキッカケで恋に落ちた話
 学生の時はベルを鳴らし店員さんに直接注文を伝えていたはずだが、いつの間にかメニューと共に置かれている注文票に注文したい商品の番号を記載するように変化しているようだった。

「これに書けばいいのよね」

 初めての注文スタイルに少し戸惑っていると、私の手からするりと注文票を抜き取った水澄さんが一緒に置かれていたボールペンも手に握る。

「どれがいいんですか?」
「なによ、貴方だけお店変えても構わないけれど」
「俺こそこの店の似合うキャラなんじゃないですか?」

 何故か拗ねたような言い方をしてしまった私はそんな自分に戸惑うが、水澄さんは気にならなかったのかさらさらとペンを走らせる。

 姿勢よく書き進める様は、彼の言うキャラとは反対にどこか大人びて見え、店の雰囲気とのチグハグさがなんだか少し可笑しかった。


“なにがこの店の似合う、よ。きっとどの店にいても様になるくせに”

 なんて思わされたことは悔しいので、一生伝えるつもりはないけれど。


「私、シュリンプのサラダが食べたいわ」
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