完璧美人の私がうっかりスカートを穿き忘れた事がキッカケで恋に落ちた話
 下心があるか見極めるどころか、これでは下心があるのは完全に私の方だと気付き額にじわりと汗が滲む。
 あれだけ飲んだワインは一瞬でどこかに消えたようで、完全に酔いが覚めた私だったが動揺からか言葉は上手く出なかった。


「だからその、今のは」
「魅力的なお誘いなんですが……まだ仕事が……」
「は?」

 そしてそんなしどろもどろな私に告げられた彼の一言は、形勢逆転とばかりに私から呆れたような一言を引き出した。

「まだ、仕事が?」
「あ、あー、はは、まぁ……少しだけ?」

“なんで疑問形なのよ!”

 というか、彼が頑なにワインを飲まなかったのは。

「まさか今から会社に戻るとか言うんじゃないでしょうね!?」
「いやぁ、そのまさかだったり」
「だったらもっと早く言いなさいよ!? 私、水澄さんはお酒飲めなかったのねなんて思うだけで何も気付かなくて!」
「お酒はそれなりに飲みますけどね。今日はほら、もうすぐ大きいコンペがあって」
「なら尚更なんで今日……」

 ――あ、違う。
 彼が今日私を誘ったのは、私を助けるために同僚にあんな言い訳をしたからだ。
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