完璧美人の私がうっかりスカートを穿き忘れた事がキッカケで恋に落ちた話
“口先だけの約束だと、どこかでボロが出るかもしれないし、そのボロは必ず突かれるもの”

 だからその『約束』を『本当』にしてくれたのだ。


「コンペ、大事なくせに」

 ぽつりとそんな言葉が溢れる。
 こんな言い方がしたい訳じゃないのに、本当は来てくれて嬉しいくせに。

 本当に付き合っているわけでもない私の為にわざわざ時間を使い、心配だからと会社から遠ざかるのに送ってくれて。


 水澄さんはなんでこんなに親切なのだろう。
 気遣ってくれるのだろう。

 きっかけはたまたま居合わせたというだけなのに。


「……可愛い彼女が、頑張ってって言ってくれたらこのコンペ取れるかもしれませんね」
「それって」
「今回結構競合なんですよね。だから頑張ろうって思えるような後押しが欲しいなって」
「もう……」

 はぁ、とため息が私の口から零れ、口角は上がり頬がじわりと熱を持った。

“私は本物の彼女じゃないけれど”


「――頑張ってね、水澄さんならきっと大丈夫だと思うけど」
「はい、ありがとうございます」

 ニッと笑う彼はやはり年齢より幼く見えるのにどこか大人っぽくも感じて。
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