完璧美人の私がうっかりスカートを穿き忘れた事がキッカケで恋に落ちた話
“余計なお世話だし、泥沼地獄の入り口だし、そうでなくてもこんなセクハラマンお断りなんだけど……!”

「俺のって人より長いみたいなんだ、美月ちゃんの奥をたくさん突いてあげられるんだけどなぁ……?」

 流石に度が越した発言を流すのもそろそろ限界だった私は、精一杯苛立ちを隠しながら副社長の方を見上げる。
 ここで言い返したり文句を言ったりするのは絶対失策だと脳内の冷静な私が警鐘を鳴らすが、同じく脳内の苛烈な私が足くらい踏んでやれと盛大に興奮していた。
 
 本当に今更だが、なんでこんな人に人気があるのかわからない。

「あの、お言葉ですが……」
「お疲れ様です」

 そんな私の言葉を遮るように私と副社長の間を割り込んできたのは、最近バタバタと忙しそうにしていた水澄さんだった。

“なんでここに?”

 ただでさえ忙しく外に出ていることが多いのに、営業部があるのは五階と六階。
 待ち伏せしていただろう副社長はともかく、二階の廊下に何故彼がいるのかと思わず首を傾げてしまう。

 だが、戸惑いを隠せない私を背に庇うようにしてたった水澄さんは、すぅっと大きく息を吸って。

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