完璧美人の私がうっかりスカートを穿き忘れた事がキッカケで恋に落ちた話
 ――彼だったからだ。


“遅くまで頑張っていたの、知っていたもの”


 受付にいれば、誰が何回通っただとか定時過ぎてもまだ帰っていないとかがわかる……なんてことはなく。

“私が水澄さんのことを目で追っていたから気付いただけ、ね”

 そして突然視界の外から抱き付かれても、多少痛くてもその腕を振り払わなかったのも、声だけで相手が誰かがわかったのも。

 きっと全部、何度も助けてくれて、そして誰よりも努力している彼だったからだろう。


“私の胸が痛いくらい跳ねてるのは、突然で驚いたから――……”

「……は? 私なに見させられてるんです?」
「「!!」」

 わざとらしすぎる大きなため息に、ここが受付だったと気付いた私たちは同時に肩を跳ねさせ、慌てて元の体勢に戻った。


「あ、あー、その、改めてだけどおめでとう」
「あ、あはは、ありがとうございます」

 コホンと咳払いした私がそういうと、水澄さんも少しぎこちなく笑いながらお礼を言った。

“照れてるのかしら”

 いつもどこかしれっとしているのに彼の目元がいつもより赤く染まっているのを見て少し浮かれた気持ちになる。
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