完璧美人の私がうっかりスカートを穿き忘れた事がキッカケで恋に落ちた話
 もし彼が熱心に玄関ロビーへと警備の目を向けていなければ、私がスカートを穿いていないことに気付いただろうから。


「……いつから!? って、制服に着替えた時以外ないんだけど」

 今日は朝から同僚が体調不良を理由にサボりに出かけ、イライラしながら一人更衣室で着替えた。
 着替え終わったあと、エレベーターへ向かう廊下で、いつもより自身の顔が赤いとは思ったがまさか熱でもあるのだろうか。

“例え熱のせいだとしてもこの失態はヤバすぎるわ”

 受付に来た時はまだ誰も出社してきていなかった。
 その時間から少したった今も、まだ他部署の出社時間ではないので見渡す限りいない。
 しかしそろそろ誰かが出社してきてもおかしくはない時間に差し掛かろうとしていて。
 

「誰かひとりにでも気付かれたら終わりよ」

 そうなれば私のクールで完璧美人のイメージは崩壊し、変態で完璧痴女の完成である。

“ここからどうやって更衣室へ行くかが問題ね”

 幸い受付テーブルは高く電話機なども隠せるよう目隠しを兼ねたカウンターもあるため、座っている状態ならば首近くまでが隠れる。
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