完璧美人の私がうっかりスカートを穿き忘れた事がキッカケで恋に落ちた話
 わかりやすいくらいのぶりっ子に簡単に落ちる男は、そのぶりっ子な振る舞いに騙されているのではなく、『自分のために可愛く見せようとぶりっ子している』という行為にときめくのだと誰かが言っていたことを思い出す。

 同僚のこのわかりやすいほどの声色も、私からすれば失笑でも男性の水澄さんからすれば、可愛く映るのかもしれない。


“やめて”
 
「金曜日とかだったら、次の日休みだしぃ」

“や、やだ”

「私はそれでも別に……」

“その人は私のっ”


「え、なんでですか?」
「……へ?」

 足元がらまとわりつきながら這い上がるような言い表せないその不安を断ち切るように、ぽかんとした水澄さんに私と同僚も唖然とする。

“水澄さん、なんでって言った?”

 まさか彼はこれだけあからさまに誘われているのに気づいてないのだろうか。
 それとも気付いてて流そうとしてるの?
 
「え、ですからぁ、私がお祝いを」
「いや、だからそれがなんでかなって。あ、営業部みんなでお祝い会とかすると思ってる? 部署の飲み会って何年か前に盛岡部長が廃止にしたからもうやってないんだけど」
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