完璧美人の私がうっかりスカートを穿き忘れた事がキッカケで恋に落ちた話

11.苛立ったって仕方ないでしょ

“またいないんだけど”

 いつも出勤に使う電車の兼ね合いなのか、いつも私より早く来ていた同僚の姿が見えないことに気付いた私は朝から盛大にため息を吐いた。


「どうせサボりよね」

 女子トイレでのんびり入念なメイク直しか。
 それとも近くのカフェでのんびり朝のコーヒータイムなのか。

 出勤中に何か――なんて心配するような間柄でもないので少しもやつきながら廊下を歩く。
 歩きながらガラス窓に反射した自分の姿を見て今日もちゃんとスカートを穿いていることを確認した私は、ちゃんと今日も完璧に振る舞うのだとガラスに映った自分に大きく頷いた。


 あの私がうっかりスカートを穿き忘れた日からもう三か月ほどたっている。
 その間、水澄さんと出掛けたのは二回だけ。

“改めて思い返しても不思議ね”

 お節介だと思えるほどなんで彼が親切なのか。
 最初は目の前で具合を悪くした私を心配しただけのお人よしを発揮したんだと思うけれど。

“休日にわざわざ出かけたのはなんでなのかしら”

 半ば脅しのような誘い文句だったくせに、彼からは下心なんて微塵も感じなかった。
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