完璧美人の私がうっかりスカートを穿き忘れた事がキッカケで恋に落ちた話
「そのくせ男に媚びるんだもの、本当に信じらんなぁい」

“だからってここまで言いがかりを付けられて私だけが悪いとは言わせないわよ!?”

 この場に乗り込んで私がいつ男に媚びたのかと問い詰めるのもいいが、スマホの録音アプリで会話を録音し人事に提出するのも悪くない。
 そう考えた私はスカートのポケットからスマホを取り出し、録音をスタートさせた。
 
 
「でも、まさか水澄さんがシーバスクエアの契約を本当に取るとは思わなかったわ」

“水澄さんの話?”

 突然の彼の話題にドキリとし、スマホを握る手にじわりと汗が滲む。
 自分に対する悪意の証拠として録音を開始したはずが、まさか彼の話になるとは思わなかったからだ。
 

「見る目だけはあったってことよね、だって副社長の次は水澄さんだし」
「やだ、あんた最初は顔と愛想と若さだけ、なんて言ってたじゃん」
「だってシーバ取るなら別じゃなぁい? 事業展開や企業規模、あと今回は結構競合会社もコンペに出してたっていうしぃ」
「ま、それはそう」
「小さい契約とは訳が違うのよねぇ~。あの若さで次主任になるかもしれないわ」
「顔と愛想だけじゃなかったかー」
 
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