完璧美人の私がうっかりスカートを穿き忘れた事がキッカケで恋に落ちた話
 先方のお名前の読み方を間違わないように家でも繰り返し勉強して。
 情報収集だって怠らないようにした。
 
 その重ねた努力で今の私が出来ていて、そうやって私は私を作ったけれど。

“いつも冷静で、間違っても声を荒げたりせず対処ができることかしら”


 自分の大事な人を守るための声も上げられないのなら、そんな“私”はいらないから。


「謝りなさい」
「え、な……」
「謝りなさいって言ってんのよっ!」

 私たちが他の社員よりも早く出社しているとはいえ、早めに出社している他の社員もいたのだろう。
 思ったより私の声が大きかったのか、何人かの社員たちがなんだなんだと集まり視線を感じる。

 事情のしらない人からすれば私が一方的に怒鳴っているように見えているかもしれない。

“それでも別にいいわ。根拠のない噂より事実を流される方が納得できるもの”

 
「私のことは何を言っても……よくない、心底腹立ってるけど!」

 それ以上に腹立っているのは、許せないのは。

「水澄さんの頑張りまで貶すことは許さないから! だから謝りなさいよ、今すぐに!!」

 
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