完璧美人の私がうっかりスカートを穿き忘れた事がキッカケで恋に落ちた話
 絶妙に失礼な言い回しが気になるが、にこにこした顔を見ると苛立つ気持ちもすぐに落ち着いてしまう。
 これが惚れた弱みだと思ったら少し悔しい。
 
 だから。
 
「……最初から頭に血が上っていた訳じゃないもの」
「?」
「貴方の話が出たから、怒っちゃったのよ」
「!」

 真顔で言うには少し照れくさく顔を背けながらそう伝えるが、視線の端に映った彼の顔が一気に赤く染まったのを見て満たされた気持ちになった。


 
 私がスカートを穿き忘れたあの日も受付の仕事をサボっていた彼女は、私の録音した音声が決定打となり反省・改善がないと判断された。
 おそらく次の人事異動で彼女たちは異動になるだろう。

 ずっと悩まされていた副社長も、水澄さんが追い払ってくれた日から絡んでこなくなったので、ぜひこれに懲りてもう誰かに声をかけるようなことをせず奥様だけに向き直っていただきたい。
 

“なんて失態、なんて思ったけど”

 間違いなく私の人生で一番あり得ない失態ではあったのだけれど。


 スカートを穿き忘れたあの日をキッカケに、彼に出会い恋に落ちたから。

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