完璧美人の私がうっかりスカートを穿き忘れた事がキッカケで恋に落ちた話
番外編1

1.帰さなくて、いいんですか

「いいのよ。だって明日は休みで、そして今は恋人と一緒なんだもの!」

“なんて言ってはみたけど……”


 お会計を済ませ居酒屋の外に出る。
 時刻はもうすぐ21時を回るくらいで、いつもなら解散する時間帯。

 だが相手が恋人ともなれば話は別で。


“さっきあんなこと言ったし、水澄さんも意識してるはずよね”

 恋人になる前だが何度か出掛けた私たちは、それはそれは健全なデートをした。
 休日は16時に解散するレベルの健全さで、下手をすれば中学生よりも早い解散である。

 そんな私たちなのだ、多少意識したところで今日突然何かあるかと言われれば……


“なさそうね”


 別にシたくない訳ではないが、無理やりすることでもないからと考え直した私はうんうんと頷いた。

「そうね、今日は手を繋げれば……」

 
 ぽつりと呟いたその言葉が聞こえたのかはわからないが、少し照れくさそうにそっと手を差し出されてドキリと心臓が跳ねる。

 ――この距離感が、嬉しくて。


“あれだけ早くい時間の解散、実はショックだったのかも”

 デートを申し込んで来たのは水澄さんのくせに、と。
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