しゃぼん玉と約束
12月
〜瑠木side〜
今日も眠い目を擦りながら学校に向かっていた。そのとき、俺を抜かしていった女子2人組の会話が聞こえた。
「掲示板見た?」
「見た見た!一ノ瀬さんのやつでしょ?あれ花巻さんが書いてたんだねー。」
あれ?なんで、花巻の仕業だって知ってるんだ?
俺はその場に立ち止まった。そしてスマホを取り出し、掲示板アプリを開いた。すると、トップに大きく謝罪文が書かれていた。
こんにちは。1年7組の花巻美杜です。
今までの自分の行動を改めようと思い、正直に言いたいと思います。
これまで同じクラスの一ノ瀬湊月さんに対する酷い書き込みを載せていたのは私です。長い間、一ノ瀬さんに苦しい思いをさせてしまったことに自分勝手な行動であったなと思い、このような形でお詫びします。
本当にごめんなさい。
その文章を読んで、俺は安心した。
良かった、湊月、花巻と話できたんだな。ようやく湊月も1歩を踏み出せたみたいだ。
俺はスマホをしまって、また歩き出した。
教室の前までくると、たくさんの人に囲まれた湊月が見える。俺は無意識に口角が上がった気がした。
「おはよ瑠木。」
「おはよ。」
挨拶してきた湊月は前のように笑っていた。
そして、湊月の机にはたくさんのお菓子や化粧品があった。
「本当に今まで酷いこと言ってごめんね湊月ちゃん。これ、良かったら使って?」
「私もごめん!」
そのような声が聞こえて、みんな湊月に謝ってるんだと気づいた。しかも、あれだけ距離を置いていた川本(由莉)と朝田(捺未)までいる。
隣で笑う湊月は本当に楽しそうで、幸せそうだ。
「ほんとに美杜ちゃん酷すぎない?あれはやり過ぎてるよ。」
誰かが言った言葉を聞いて、花巻の方にみんなの視線が動いた。
昨日までは花巻の近くにたくさん人が群がっていたけど、今は1人だ。
「謝って済むことじゃないよねー。」
「ねー。そんなことも分からなかったのかな?」
女子が口々に花巻を叩いていく。俺はそれを聞いて、
「花巻のこと言ってるけど、お前らも昨日まで同じことしてだろ。湊月を悪く言って面白がってたくせに。それも謝って済むもんじゃない。」
と言った。それを聞いて女子が下を向いていく。
人はすぐに噂を信じてその人のことを悪く言う。学校という場所はそういうことばかり。
「簡単に掲示板なんか信じやがって、湊月がどれだけ辛かったか知らないくせに、」
「もういいの瑠木。私はもう大丈夫だから。」
俺の言葉を遮って湊月は言った。
俺は湊月が今まで苦しんでいたのをずっとそばで見てきた。だからすぐには他の奴らのことなんて信じることができない。
でも湊月が許してるなら、、
「分かったよ。」
と口を尖らせて、それ以上何も言わないようにした。
そのときドアが開いて先生が「連絡するぞー。」という言葉に、みんな自分の席に向かった。
「なぁみんな聞いてほしい!もうすぐでクリスマスだろ?先生にお願いして24日教室でパーティーしたいんだけどどうだ?」
ある休み時間、急に真島が言い出した。
「パーティー?いいね!楽しそう!」
高城に続いて、クラスから真島の提案に賛同する声が上がった。
「みんなでクリスマスパーティーとか楽しそうだね!」
笑顔で湊月が言ってきて、俺は「そうだね。」と答えた。
なんだか楽しい冬休みになりそうだ。
「先輩お疲れ様です。」
「おぉ!今日もおつかれ瑠木!」
先輩に挨拶して、俺は部室を出た。1人で校門に向かっていると、先に帰ったはずの悠光がいた。こっちに気がつくと、「おつかれ!」と言って手を振ってきた。
ヒューヒューと吹く風が寒くて、俺はマフラーにうずくまる。
もう12月なのか、と薄暗い街を歩く帰り道。
「なんだかあの時みたいだな。」
隣で悠光がそう言ってきて俺は、
「俺らが一緒に帰った時のことか?」
と聞いた。
「そうそう。あの頃は正直言って、瑠木のことあんまり好きじゃなかったんだよな。」
「正直すぎだろ。」
「ごめんごめん。」
でも、確かに悠光の言う通りかもしれない。
今まで、顔が良くて、男女問わず人気で、バスケも上手い、ただのクラスメイトだと思っていた。俺もそこまで悠光のことは興味がなかったし。でも悠光の口から湊月のことが出てきてからか、俺らはお互いを気にするようになったと思う。
悠光から見て俺は好きな人の幼馴染という存在で、俺から見て悠光は恋のライバルという存在。
だけど今は学校でも結構一緒にいるようになった。なんなら、今まで一緒にいた友達より多く時間を共有しているかもしれない。
俺はそう思いながら、道端の石ころを蹴った。
「なぁ、悠光。」
俺は1つ言いたいことがあるんだ。
あの時は、なわけないだろと言ったけど、あれは嘘なんだ。本当は、、
「俺、湊月のこと好きなんだ。」
街の光に照らされた悠光の顔を見て、俺はそう言った。
これだけは言っておかないといけない。だって、嘘をついたままでいたくないと思ったから。
すると、
「うん、知ってる。」
と、ポツリと声がした。「え、」と声をこぼして、微笑む悠光を見つめた。
「逆に分かってないとでも思った?もうずっと前から知ってたよ。」
悠光の言葉は苦しそうだった。そりゃそうだよな。
「ごめん悠光。だからっ、」
「俺じゃなくて瑠木がっ!
一ノ瀬さんを幸せにしてあげてよね。」
クルッと回って俺の前に立って、悠光は笑ってきた。
そうか、悠光にはバレてたんだ。
悠光の目には、俺は恋敵として映っていたんだ。
悠光は、、分かってたんだ、。
「今まで言えなくてごめん。」
「別にいいよ。俺は大丈夫だから。」
「ほんとにっ、ごめん。」
「だから大丈夫だって。瑠木、俺のことは気にするな。お前が一ノ瀬さんを幸せにするんだ。いや、瑠木にしかできない。」
悠光はまっすぐ俺を見ている。
こんな人に俺もなりたいな。悠光のように強い人間になって、湊月の隣にいたい。
「、、俺さ、湊月に本当の気持ちを伝えたいんだ。」
その言葉に悠光は「うん。」と言った。
「もう自分の気持ちに蓋をしたくない。湊月に俺の気持ちを知ってほしい。」
「うん、そっか。覚悟はある?」
「正直、すごく怖い。でも俺にはできるって、そんな気がするんだ。」
俺を変えてくれた湊月に俺の気持ちを伝えたい。
もう、周りの目を気にして我慢してたあの時の俺じゃないから。
俺にはできる。
駅前まで来てようやく、
「いいじゃん、瑠木。めっちゃかっこいいよ。」
と、悠光が褒めてくれた。
いつも通り「ただいま。」と家に入って、部屋に向かう。
伝えたい、この気持ち。
そんな思いを抱いて部屋のドアを開けた。窓を開けて、棚のダンボールからあれを探し出す。
きっとまだ、捨ててないはず、、!
おもちゃをかき分けていくと、
「あった!」
と思わず声が出た。
容器に液をたらして、吹き具にその液をつける。そして、吹く。
ふわぁ。
冬だからだろうか、今日は曇りだったはずなのに、夜空に星が瞬いているのが綺麗だ。その星空に向かって俺が吹いたしゃぼん玉が広がっていく。
あの時みたいに、湊月とここで話せたら、、
すると、気持ちが通じたように、ガチャッと向かいの窓が開かれた。
「瑠木、、」
今日も仕事があって早退してたから、湊月の顔を見るのは少し久しぶりに感じた。すると、湊月は俺を見て何かを思いついたような顔をする。「ちょっとまってて。」と言われて言葉の通りに待っていると、湊月は何かを持って現れた。
ふわぁ、と湊月が吹いたしゃぼん玉が月に向かった。
「こんばんは、瑠木くん!」
湊月がその言葉を言ったあと、俺らはくすくす笑いだした。
何年ぶりに聞いたのだろう。俺らがしゃぼん玉を通じて話してた時、湊月がいつも言ってくれた言葉を聞いたのは。くん付けで呼ばれていたことが、今では少し違和感を感じる。
向かい側で笑う湊月は、やっぱり綺麗だった。月明かりに照らされ、しゃぼん玉に囲まれて、まるで夜のお姫様のようだ。そんな湊月を守りたい。ずっとこれからも。
"瑠木に湊月を幸せにする許しを与える。"
維月くんの言葉を、
"お前が一ノ瀬さんを幸せにするんだ。いや、瑠木にしかできない。"
悠光のあの言葉を信じてもいいかな、いや、信じるよ。
「なぁ湊月!」
俺の言葉に湊月は「ん?」と不思議そうな顔で見てきた。
「俺、、、湊月のことが、ずっと好きだった。」
言った瞬間、湊月がびっくりした顔をして、胸がじわぁと熱くなり、俺は思わず下を向いてしまった。
「湊月は覚えてるかな、ここで結んだ約束を。」
10年前の今日、ここで約束をした。
俺はあの時からずっと本気だった。だからはっきりと覚えてるんだ。あれは冗談で言ってない。
「覚え、てるよ、、」
湊月からその言葉放たれた時、俺は顔を上げた。するとその先には少し顔を赤らめた湊月が俺に言った。
「いつからか、あの言葉が本気だったらって思ってた。瑠木のことで頭がいっぱいで、仕事してる時は会いたいなって思って。なんだか、おかしかったの。」
じわっ。
俺は胸の中が暖かくなっていくのを感じた。
あぁそうだったんだ。湊月も同じ気持ちだったんだ。 俺だけじゃなかったんだな。
悠光のあの言葉、、湊月から何か聞いてたから自信があるように聞こえてたんだね。
「瑠木!」
湊月から呼ばれて前を向くと、湊月は何か欲しそうな表情をしていた。俺はハッとした。
約束。
そして俺は口を開く。
「何があってもいつだって俺が湊月の傍にいる。だから湊月も俺の傍にいてね。約束しよう。、、、、、、
俺と付き合ってください。」
しゃぼん玉と約束。
今日も眠い目を擦りながら学校に向かっていた。そのとき、俺を抜かしていった女子2人組の会話が聞こえた。
「掲示板見た?」
「見た見た!一ノ瀬さんのやつでしょ?あれ花巻さんが書いてたんだねー。」
あれ?なんで、花巻の仕業だって知ってるんだ?
俺はその場に立ち止まった。そしてスマホを取り出し、掲示板アプリを開いた。すると、トップに大きく謝罪文が書かれていた。
こんにちは。1年7組の花巻美杜です。
今までの自分の行動を改めようと思い、正直に言いたいと思います。
これまで同じクラスの一ノ瀬湊月さんに対する酷い書き込みを載せていたのは私です。長い間、一ノ瀬さんに苦しい思いをさせてしまったことに自分勝手な行動であったなと思い、このような形でお詫びします。
本当にごめんなさい。
その文章を読んで、俺は安心した。
良かった、湊月、花巻と話できたんだな。ようやく湊月も1歩を踏み出せたみたいだ。
俺はスマホをしまって、また歩き出した。
教室の前までくると、たくさんの人に囲まれた湊月が見える。俺は無意識に口角が上がった気がした。
「おはよ瑠木。」
「おはよ。」
挨拶してきた湊月は前のように笑っていた。
そして、湊月の机にはたくさんのお菓子や化粧品があった。
「本当に今まで酷いこと言ってごめんね湊月ちゃん。これ、良かったら使って?」
「私もごめん!」
そのような声が聞こえて、みんな湊月に謝ってるんだと気づいた。しかも、あれだけ距離を置いていた川本(由莉)と朝田(捺未)までいる。
隣で笑う湊月は本当に楽しそうで、幸せそうだ。
「ほんとに美杜ちゃん酷すぎない?あれはやり過ぎてるよ。」
誰かが言った言葉を聞いて、花巻の方にみんなの視線が動いた。
昨日までは花巻の近くにたくさん人が群がっていたけど、今は1人だ。
「謝って済むことじゃないよねー。」
「ねー。そんなことも分からなかったのかな?」
女子が口々に花巻を叩いていく。俺はそれを聞いて、
「花巻のこと言ってるけど、お前らも昨日まで同じことしてだろ。湊月を悪く言って面白がってたくせに。それも謝って済むもんじゃない。」
と言った。それを聞いて女子が下を向いていく。
人はすぐに噂を信じてその人のことを悪く言う。学校という場所はそういうことばかり。
「簡単に掲示板なんか信じやがって、湊月がどれだけ辛かったか知らないくせに、」
「もういいの瑠木。私はもう大丈夫だから。」
俺の言葉を遮って湊月は言った。
俺は湊月が今まで苦しんでいたのをずっとそばで見てきた。だからすぐには他の奴らのことなんて信じることができない。
でも湊月が許してるなら、、
「分かったよ。」
と口を尖らせて、それ以上何も言わないようにした。
そのときドアが開いて先生が「連絡するぞー。」という言葉に、みんな自分の席に向かった。
「なぁみんな聞いてほしい!もうすぐでクリスマスだろ?先生にお願いして24日教室でパーティーしたいんだけどどうだ?」
ある休み時間、急に真島が言い出した。
「パーティー?いいね!楽しそう!」
高城に続いて、クラスから真島の提案に賛同する声が上がった。
「みんなでクリスマスパーティーとか楽しそうだね!」
笑顔で湊月が言ってきて、俺は「そうだね。」と答えた。
なんだか楽しい冬休みになりそうだ。
「先輩お疲れ様です。」
「おぉ!今日もおつかれ瑠木!」
先輩に挨拶して、俺は部室を出た。1人で校門に向かっていると、先に帰ったはずの悠光がいた。こっちに気がつくと、「おつかれ!」と言って手を振ってきた。
ヒューヒューと吹く風が寒くて、俺はマフラーにうずくまる。
もう12月なのか、と薄暗い街を歩く帰り道。
「なんだかあの時みたいだな。」
隣で悠光がそう言ってきて俺は、
「俺らが一緒に帰った時のことか?」
と聞いた。
「そうそう。あの頃は正直言って、瑠木のことあんまり好きじゃなかったんだよな。」
「正直すぎだろ。」
「ごめんごめん。」
でも、確かに悠光の言う通りかもしれない。
今まで、顔が良くて、男女問わず人気で、バスケも上手い、ただのクラスメイトだと思っていた。俺もそこまで悠光のことは興味がなかったし。でも悠光の口から湊月のことが出てきてからか、俺らはお互いを気にするようになったと思う。
悠光から見て俺は好きな人の幼馴染という存在で、俺から見て悠光は恋のライバルという存在。
だけど今は学校でも結構一緒にいるようになった。なんなら、今まで一緒にいた友達より多く時間を共有しているかもしれない。
俺はそう思いながら、道端の石ころを蹴った。
「なぁ、悠光。」
俺は1つ言いたいことがあるんだ。
あの時は、なわけないだろと言ったけど、あれは嘘なんだ。本当は、、
「俺、湊月のこと好きなんだ。」
街の光に照らされた悠光の顔を見て、俺はそう言った。
これだけは言っておかないといけない。だって、嘘をついたままでいたくないと思ったから。
すると、
「うん、知ってる。」
と、ポツリと声がした。「え、」と声をこぼして、微笑む悠光を見つめた。
「逆に分かってないとでも思った?もうずっと前から知ってたよ。」
悠光の言葉は苦しそうだった。そりゃそうだよな。
「ごめん悠光。だからっ、」
「俺じゃなくて瑠木がっ!
一ノ瀬さんを幸せにしてあげてよね。」
クルッと回って俺の前に立って、悠光は笑ってきた。
そうか、悠光にはバレてたんだ。
悠光の目には、俺は恋敵として映っていたんだ。
悠光は、、分かってたんだ、。
「今まで言えなくてごめん。」
「別にいいよ。俺は大丈夫だから。」
「ほんとにっ、ごめん。」
「だから大丈夫だって。瑠木、俺のことは気にするな。お前が一ノ瀬さんを幸せにするんだ。いや、瑠木にしかできない。」
悠光はまっすぐ俺を見ている。
こんな人に俺もなりたいな。悠光のように強い人間になって、湊月の隣にいたい。
「、、俺さ、湊月に本当の気持ちを伝えたいんだ。」
その言葉に悠光は「うん。」と言った。
「もう自分の気持ちに蓋をしたくない。湊月に俺の気持ちを知ってほしい。」
「うん、そっか。覚悟はある?」
「正直、すごく怖い。でも俺にはできるって、そんな気がするんだ。」
俺を変えてくれた湊月に俺の気持ちを伝えたい。
もう、周りの目を気にして我慢してたあの時の俺じゃないから。
俺にはできる。
駅前まで来てようやく、
「いいじゃん、瑠木。めっちゃかっこいいよ。」
と、悠光が褒めてくれた。
いつも通り「ただいま。」と家に入って、部屋に向かう。
伝えたい、この気持ち。
そんな思いを抱いて部屋のドアを開けた。窓を開けて、棚のダンボールからあれを探し出す。
きっとまだ、捨ててないはず、、!
おもちゃをかき分けていくと、
「あった!」
と思わず声が出た。
容器に液をたらして、吹き具にその液をつける。そして、吹く。
ふわぁ。
冬だからだろうか、今日は曇りだったはずなのに、夜空に星が瞬いているのが綺麗だ。その星空に向かって俺が吹いたしゃぼん玉が広がっていく。
あの時みたいに、湊月とここで話せたら、、
すると、気持ちが通じたように、ガチャッと向かいの窓が開かれた。
「瑠木、、」
今日も仕事があって早退してたから、湊月の顔を見るのは少し久しぶりに感じた。すると、湊月は俺を見て何かを思いついたような顔をする。「ちょっとまってて。」と言われて言葉の通りに待っていると、湊月は何かを持って現れた。
ふわぁ、と湊月が吹いたしゃぼん玉が月に向かった。
「こんばんは、瑠木くん!」
湊月がその言葉を言ったあと、俺らはくすくす笑いだした。
何年ぶりに聞いたのだろう。俺らがしゃぼん玉を通じて話してた時、湊月がいつも言ってくれた言葉を聞いたのは。くん付けで呼ばれていたことが、今では少し違和感を感じる。
向かい側で笑う湊月は、やっぱり綺麗だった。月明かりに照らされ、しゃぼん玉に囲まれて、まるで夜のお姫様のようだ。そんな湊月を守りたい。ずっとこれからも。
"瑠木に湊月を幸せにする許しを与える。"
維月くんの言葉を、
"お前が一ノ瀬さんを幸せにするんだ。いや、瑠木にしかできない。"
悠光のあの言葉を信じてもいいかな、いや、信じるよ。
「なぁ湊月!」
俺の言葉に湊月は「ん?」と不思議そうな顔で見てきた。
「俺、、、湊月のことが、ずっと好きだった。」
言った瞬間、湊月がびっくりした顔をして、胸がじわぁと熱くなり、俺は思わず下を向いてしまった。
「湊月は覚えてるかな、ここで結んだ約束を。」
10年前の今日、ここで約束をした。
俺はあの時からずっと本気だった。だからはっきりと覚えてるんだ。あれは冗談で言ってない。
「覚え、てるよ、、」
湊月からその言葉放たれた時、俺は顔を上げた。するとその先には少し顔を赤らめた湊月が俺に言った。
「いつからか、あの言葉が本気だったらって思ってた。瑠木のことで頭がいっぱいで、仕事してる時は会いたいなって思って。なんだか、おかしかったの。」
じわっ。
俺は胸の中が暖かくなっていくのを感じた。
あぁそうだったんだ。湊月も同じ気持ちだったんだ。 俺だけじゃなかったんだな。
悠光のあの言葉、、湊月から何か聞いてたから自信があるように聞こえてたんだね。
「瑠木!」
湊月から呼ばれて前を向くと、湊月は何か欲しそうな表情をしていた。俺はハッとした。
約束。
そして俺は口を開く。
「何があってもいつだって俺が湊月の傍にいる。だから湊月も俺の傍にいてね。約束しよう。、、、、、、
俺と付き合ってください。」
しゃぼん玉と約束。