しゃぼん玉と約束
夢
〜瑠木side〜
2年後。
俺たちは高校を卒業した。
俺はずっと諦めていなかったパティシエになるという夢を叶えるために、フランス留学を決めたんだ。
明後日の昼1時の便で俺は日本を発つ。だから部屋の片付けをしていると、ふと思い出した。
高1の3学期。ついに学校にも隣の家にも湊月がいなくなって、やっと実感した。今までどれだけ湊月が日常にいて、大切だったのかを。
悠光も「一ノ瀬さんが頑張ってるから俺も頑張ることにした。」と言ってバスケと勉強を必死に頑張っていた。
高城は高城で、モデル活動に専念すると言って、その年の夏にアメリカに行ってしまった。
なんと花巻はあの後すぐ転校して、その高校の知り合いから聞いたところ、上手くやっていたみたいだ。
3年生にもなれば、クラスで一気に受験モードに突入し、あれだけ遊んだり、騒いでいた奴らが休み時間にも机に向かって一生懸命勉強していた。
今となって、俺たちはそれぞれ違うところで頑張っていたんだと思う。
リビングのソファーに座ってテレビを見ていた結生が、
「お兄ちゃん!湊月ちゃん出たよ!」
と言ってきて、俺はすぐさま階段を降りた。すると、
「今、日曜ドラマの主演として人気絶頂の新人女優、橋本湊月さんに密着してみました!」
とアナウンサーが言った。
湊月は上京してすぐドラマや映画の仕事が増え、今では言葉の通り、橋本湊月として知らない人はいないほどの人気女優となっている。
実は上京後、直接会ったのはたったの1度だけだ。
維月くんのお墓参りに一緒に行ったきり会っていない。お互い、仕事や学校で忙しかったけど合間を縫って電話したり連絡をとったりはしていた。
今、湊月何してるんだろうな。
ふとそんな気持ちになった時、ピンポーンとチャイムが鳴った。
「はーい」と言って玄関のドアを開けると、
「瑠木ー!」
と突然抱きつかれた。
嘘、だよな。でもこの匂いはっ。
「湊月ちゃん!」
だけど後ろから結生がそう叫んで、嘘じゃないと分かった。
「帰ってきたの??」
結生が俺の存在がないように聞く。
「そうじゃないの。瑠木がフランスに行っちゃうって聞いたから、飛んできたんだ。」
息を切らしながら言う湊月を、もう一度抱きしめた。
「会いたかったずっと。」
「うん。私もだよ。」
今まで抑えていた気持ちを、今やっと口にできた。背中に回された湊月の手のぬくもりを感じて、涙が出そうだ。後ろで結生がどんな顔で見ていようが関係ない。俺はずっと湊月に会いたかったんだから。
「瑠木、私女優になったよ。夢、叶えたよ。」
身体を離して湊月の目を見ると、溜まっていた涙がポロッと流れて、それを指で拭った。
「おめでとっ湊月。」
と祝うと、
「だから次は瑠木の番。」
とさっきより力が入った言葉が湊月の口から出た。
「次は瑠木が夢を叶える番だよ。」
その言葉はなんだかくすぐったくて、頼もしかった。大切な人の言葉はこんなに信じれるんだな。なんだか力が湧いてくる感じがした。
「うん、やってみせるよ。」
晴れた青空の下、俺は笑顔を作ってみせた。
その時、どこからかしら1つのしゃぼん玉が飛んできて、俺たちの目の前で弾けた。
それはまるで、空からずっと見ているよ、というメッセージを送ってきてくれたような、そんな気がしたんだ。
夢と約束。
2年後。
俺たちは高校を卒業した。
俺はずっと諦めていなかったパティシエになるという夢を叶えるために、フランス留学を決めたんだ。
明後日の昼1時の便で俺は日本を発つ。だから部屋の片付けをしていると、ふと思い出した。
高1の3学期。ついに学校にも隣の家にも湊月がいなくなって、やっと実感した。今までどれだけ湊月が日常にいて、大切だったのかを。
悠光も「一ノ瀬さんが頑張ってるから俺も頑張ることにした。」と言ってバスケと勉強を必死に頑張っていた。
高城は高城で、モデル活動に専念すると言って、その年の夏にアメリカに行ってしまった。
なんと花巻はあの後すぐ転校して、その高校の知り合いから聞いたところ、上手くやっていたみたいだ。
3年生にもなれば、クラスで一気に受験モードに突入し、あれだけ遊んだり、騒いでいた奴らが休み時間にも机に向かって一生懸命勉強していた。
今となって、俺たちはそれぞれ違うところで頑張っていたんだと思う。
リビングのソファーに座ってテレビを見ていた結生が、
「お兄ちゃん!湊月ちゃん出たよ!」
と言ってきて、俺はすぐさま階段を降りた。すると、
「今、日曜ドラマの主演として人気絶頂の新人女優、橋本湊月さんに密着してみました!」
とアナウンサーが言った。
湊月は上京してすぐドラマや映画の仕事が増え、今では言葉の通り、橋本湊月として知らない人はいないほどの人気女優となっている。
実は上京後、直接会ったのはたったの1度だけだ。
維月くんのお墓参りに一緒に行ったきり会っていない。お互い、仕事や学校で忙しかったけど合間を縫って電話したり連絡をとったりはしていた。
今、湊月何してるんだろうな。
ふとそんな気持ちになった時、ピンポーンとチャイムが鳴った。
「はーい」と言って玄関のドアを開けると、
「瑠木ー!」
と突然抱きつかれた。
嘘、だよな。でもこの匂いはっ。
「湊月ちゃん!」
だけど後ろから結生がそう叫んで、嘘じゃないと分かった。
「帰ってきたの??」
結生が俺の存在がないように聞く。
「そうじゃないの。瑠木がフランスに行っちゃうって聞いたから、飛んできたんだ。」
息を切らしながら言う湊月を、もう一度抱きしめた。
「会いたかったずっと。」
「うん。私もだよ。」
今まで抑えていた気持ちを、今やっと口にできた。背中に回された湊月の手のぬくもりを感じて、涙が出そうだ。後ろで結生がどんな顔で見ていようが関係ない。俺はずっと湊月に会いたかったんだから。
「瑠木、私女優になったよ。夢、叶えたよ。」
身体を離して湊月の目を見ると、溜まっていた涙がポロッと流れて、それを指で拭った。
「おめでとっ湊月。」
と祝うと、
「だから次は瑠木の番。」
とさっきより力が入った言葉が湊月の口から出た。
「次は瑠木が夢を叶える番だよ。」
その言葉はなんだかくすぐったくて、頼もしかった。大切な人の言葉はこんなに信じれるんだな。なんだか力が湧いてくる感じがした。
「うん、やってみせるよ。」
晴れた青空の下、俺は笑顔を作ってみせた。
その時、どこからかしら1つのしゃぼん玉が飛んできて、俺たちの目の前で弾けた。
それはまるで、空からずっと見ているよ、というメッセージを送ってきてくれたような、そんな気がしたんだ。
夢と約束。