しゃぼん玉と約束
変われた私
〜湊月side〜
「掲示板の件、本当のこと言ってみないか?」
私は何もしてないから悪くない。でもどうせ誰も信じてくれないって諦めてた。
もうこのままでいいや。
東京の芸能学校に編入したいって思ってる自分がいたから。そのうち編入試験受けて合格すれば、この苦しみから抜け出せるはずだって。
でもやっぱり瑠木の言う通りだ。
本当のこと言いたい。
昨日雑誌の撮影があってスタジオに行くと、何人かの編集部の方が掲示板のことを話しているのが聞こえてきた。
確かに学校の掲示板だけでなく、SNSでも私の悪口は流れている。そのせいで、以前より仕事が少なくなった気もしていた。
そうだ、仕事にも影響してる。
このままじゃダメだ。
私はそう思いながら、学校の校門をくぐった。
教室に入ると、いつも通りで声をかけてくれる人はいない。
自分の席に荷物を下ろすと、私は美杜の方へ向かう。
大丈夫、私は言える。そう唱えながら言う。
「美杜、少し話がしたいの。放課後残っていてほしい。」
クラスメイトもどんどん下校して行って、教室には私と美杜が残った。
「それで、話って何?」
先に口を開いたのは美杜だった。美杜は自分の机に座ってネイルをつついている。
「掲示板の書き込み、書いてるの美杜でしょ。」
「何でそうなるわけ?」
「私のこと嫌いなのは分かってるから。なんであんな事書くの?何が気にくわないの?」
すると、美杜の指が止まった。机からおりて、私の前まで来る。
「あんたを見てると腹が立つからよ。だからみんなに嫌われるように書き込んだり、瑠木くんを奪おうとしたの!いつも楽しそうに笑いやがって、維月くんはあんたのせいで死んだんだよ?私の気持ちも知らずに、何であんたが生きてんのよ!」
「それは違う!私は、お兄ちゃんに助けてもらったの。だからお兄ちゃんの分まで生きてるの。それに、美杜がお兄ちゃんのこと好きだったのも知ってるよ。」
「、、え?何でそれを。」
美杜はお兄ちゃんのことが大好きだったんだよね。
本当に好きな人を失うのが、どれほど辛くて苦しいことか私も分かってるから。
こないだお兄ちゃんの日記を見つけた。パラパラと読んでいる時、知ったんだ。美杜がお兄ちゃんと演技クラスが一緒だったこと。美杜がずっとお兄ちゃんを想っていたこと。そして、お兄ちゃんが美杜からの告白を受けた日の気持ちも。
「お兄ちゃんはあの時、芸能の仕事があるし、報道が出たら困るからって断ったけどね。本当はお兄ちゃんも美杜のこと好きだったんだよ。」
「うそっ、」
あの日、お兄ちゃんは自分の気持ちに嘘をついて美杜の告白を断った。それがどれだけしんどいことだったのか、日記には書いてあった。お兄ちゃんはあれが初恋だったんだ。
「私ずっと維月くんを忘れられなくて。事故で維月くんだけが死んじゃって、無事だった湊月に恨みみたいなのができて、、維月くんがいなくなったのは湊月のせい、だから湊月につらくなってもらいたい、そう思ったの。」
「そんなことして、お兄ちゃんは喜ぶと思う?自分の好きな人がそんなことして嬉しいと思う?」
私だって、ずっと自分のせいでお兄ちゃんがいなくなったと思ってきた。でもそれは、きっとお兄ちゃんにとって嬉しくもなんでもない。
「ねぇ美杜。美杜もお兄ちゃんの分を生きようよ。私と一緒にもっと楽しいこと見つけていこうよ。中学の頃みたいにさ。」
「湊月っ、、」
本当は美杜だって、掲示板の書き込みがやり過ぎだってこと分かってるだろう。でもそれをなかったことになんてできない。自分の過ちは、飲み込んで生きていかなければならないんだ。
「湊月、今までごめん。さんざん酷いこと言ったり、怪我させたりして、本当にごめんなさい。」
美杜は私の前で丁寧にお辞儀をした。
「美杜、、本当のことを言ってくれてありがとう。大丈夫、許すよ。」
「でも、私っ、本当に酷いことをっ、許されちゃいけないほどのことをしたのよ?それでも許してくれるの?」
「嘘をつかずに真剣に話してくれたから、もう怒ってないよ。それに、私は美杜を許したいんだ。だって、お兄ちゃんが好きになった人だから。」
お兄ちゃんが好きになった人。その人は真っ直ぐに本心を伝えてくれて、ちゃんと間違いを改めることができる人。さすがお兄ちゃん、見る目あるね。
「本当にありがとう湊月。私、維月くんの分まで生きるよ、約束する。」
美杜はそう言って手を出した。
「こちらこそありがとう、美杜。」
私もそう言って、美杜の手をとった。
私はなんだか嬉しくなって笑ってしまった。それにつられて美杜も笑いだした。
夕方の教室に2人の笑い声が響く。
久しぶりに美杜の本当の笑顔を見た気がした。
「やっぱり湊月、笑ってる方がかわいい。」
「美杜こそ、今の笑顔の方が絶対いいよ。」
お互い褒め合った後、私たちは一緒に教室を出た。
「この後どこか食べに行かない?」
「いいね!それならいいお店知ってるんだけど、、」
「え!どこどこ!」
「ここなんだけど、、」
「えー!いいじゃん!」
あなたのおかげで変わることができたよ。
本当にありがとう。
「掲示板の件、本当のこと言ってみないか?」
私は何もしてないから悪くない。でもどうせ誰も信じてくれないって諦めてた。
もうこのままでいいや。
東京の芸能学校に編入したいって思ってる自分がいたから。そのうち編入試験受けて合格すれば、この苦しみから抜け出せるはずだって。
でもやっぱり瑠木の言う通りだ。
本当のこと言いたい。
昨日雑誌の撮影があってスタジオに行くと、何人かの編集部の方が掲示板のことを話しているのが聞こえてきた。
確かに学校の掲示板だけでなく、SNSでも私の悪口は流れている。そのせいで、以前より仕事が少なくなった気もしていた。
そうだ、仕事にも影響してる。
このままじゃダメだ。
私はそう思いながら、学校の校門をくぐった。
教室に入ると、いつも通りで声をかけてくれる人はいない。
自分の席に荷物を下ろすと、私は美杜の方へ向かう。
大丈夫、私は言える。そう唱えながら言う。
「美杜、少し話がしたいの。放課後残っていてほしい。」
クラスメイトもどんどん下校して行って、教室には私と美杜が残った。
「それで、話って何?」
先に口を開いたのは美杜だった。美杜は自分の机に座ってネイルをつついている。
「掲示板の書き込み、書いてるの美杜でしょ。」
「何でそうなるわけ?」
「私のこと嫌いなのは分かってるから。なんであんな事書くの?何が気にくわないの?」
すると、美杜の指が止まった。机からおりて、私の前まで来る。
「あんたを見てると腹が立つからよ。だからみんなに嫌われるように書き込んだり、瑠木くんを奪おうとしたの!いつも楽しそうに笑いやがって、維月くんはあんたのせいで死んだんだよ?私の気持ちも知らずに、何であんたが生きてんのよ!」
「それは違う!私は、お兄ちゃんに助けてもらったの。だからお兄ちゃんの分まで生きてるの。それに、美杜がお兄ちゃんのこと好きだったのも知ってるよ。」
「、、え?何でそれを。」
美杜はお兄ちゃんのことが大好きだったんだよね。
本当に好きな人を失うのが、どれほど辛くて苦しいことか私も分かってるから。
こないだお兄ちゃんの日記を見つけた。パラパラと読んでいる時、知ったんだ。美杜がお兄ちゃんと演技クラスが一緒だったこと。美杜がずっとお兄ちゃんを想っていたこと。そして、お兄ちゃんが美杜からの告白を受けた日の気持ちも。
「お兄ちゃんはあの時、芸能の仕事があるし、報道が出たら困るからって断ったけどね。本当はお兄ちゃんも美杜のこと好きだったんだよ。」
「うそっ、」
あの日、お兄ちゃんは自分の気持ちに嘘をついて美杜の告白を断った。それがどれだけしんどいことだったのか、日記には書いてあった。お兄ちゃんはあれが初恋だったんだ。
「私ずっと維月くんを忘れられなくて。事故で維月くんだけが死んじゃって、無事だった湊月に恨みみたいなのができて、、維月くんがいなくなったのは湊月のせい、だから湊月につらくなってもらいたい、そう思ったの。」
「そんなことして、お兄ちゃんは喜ぶと思う?自分の好きな人がそんなことして嬉しいと思う?」
私だって、ずっと自分のせいでお兄ちゃんがいなくなったと思ってきた。でもそれは、きっとお兄ちゃんにとって嬉しくもなんでもない。
「ねぇ美杜。美杜もお兄ちゃんの分を生きようよ。私と一緒にもっと楽しいこと見つけていこうよ。中学の頃みたいにさ。」
「湊月っ、、」
本当は美杜だって、掲示板の書き込みがやり過ぎだってこと分かってるだろう。でもそれをなかったことになんてできない。自分の過ちは、飲み込んで生きていかなければならないんだ。
「湊月、今までごめん。さんざん酷いこと言ったり、怪我させたりして、本当にごめんなさい。」
美杜は私の前で丁寧にお辞儀をした。
「美杜、、本当のことを言ってくれてありがとう。大丈夫、許すよ。」
「でも、私っ、本当に酷いことをっ、許されちゃいけないほどのことをしたのよ?それでも許してくれるの?」
「嘘をつかずに真剣に話してくれたから、もう怒ってないよ。それに、私は美杜を許したいんだ。だって、お兄ちゃんが好きになった人だから。」
お兄ちゃんが好きになった人。その人は真っ直ぐに本心を伝えてくれて、ちゃんと間違いを改めることができる人。さすがお兄ちゃん、見る目あるね。
「本当にありがとう湊月。私、維月くんの分まで生きるよ、約束する。」
美杜はそう言って手を出した。
「こちらこそありがとう、美杜。」
私もそう言って、美杜の手をとった。
私はなんだか嬉しくなって笑ってしまった。それにつられて美杜も笑いだした。
夕方の教室に2人の笑い声が響く。
久しぶりに美杜の本当の笑顔を見た気がした。
「やっぱり湊月、笑ってる方がかわいい。」
「美杜こそ、今の笑顔の方が絶対いいよ。」
お互い褒め合った後、私たちは一緒に教室を出た。
「この後どこか食べに行かない?」
「いいね!それならいいお店知ってるんだけど、、」
「え!どこどこ!」
「ここなんだけど、、」
「えー!いいじゃん!」
あなたのおかげで変わることができたよ。
本当にありがとう。