【コミカライズ】「石油王にオレはなる!」 ~極上(プラチナ)御曹司と溺愛出張いってきます!!~
 私の顎を持ち上げた手をそのままに、一誠社長は第一秘書の速水さんを呼んだ。この人は社長の全てのスケジュールを管理している強者(つわもの)だ。常に殿に従う侍従のように静かに、そして全てを把握して駒を動かす人。

「速水、こいつのパスポートは用意したか?」
「はっ、こちらに用意しております」

 速水さんが白い手袋で差し出したのは、なんと私の名前のパスポートだった。

「えっ、な、なんでっ? なんで私のパスポートが?」

 慌てふためく私の耳に、今度はパタパタパタとプロペラが空気を切る音が届く。——嫌な予感がする。

 鏡張りのフロアの前面に姿を現したのは、聖コンツェルンの所有するヘリコプターだった。ビルの屋上にあるヘリポートに到着するために、飛行場から飛んできたようだ。

まるで映画のワンシーンのように、ヘリコプターをバックにした社長が口角を上げて微笑んでいる。

「清水ゆかり、オレについてこい」
「は? はいっ?」

 速水さんは私の手にパスポートをのせると、しっかりと握らせる。バラバラバラとヘリコプターの音が聞こえると共に、社長は私の手をとった。

「さ、ベガスに行くぞ」
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