恋愛経験ゼロの御曹司様が札束で口説こうとしてきた
良かれと思ってやってきた文乃の些細な善意の数々を当然のものとして捉え、何一つとして返してくれない。
その積み重ねが、事実が、文乃の疲弊した心にトドメを刺したことに、この男は気付いているのだろうか。
将吾はこんなふうに捲し立てる文乃を初めて見たせいか、しばし面食らったように黙り込んでいた。
やがて、後悔を滲ませた顔でかぶりを振る。
「……ごめん。周りに、言われた。あの日のことを抜きにしても、俺が文乃を大事にしてるようには、思えなかったって」
「……」
「俺の都合でデートも全然連れて行ってやんなかったし、文乃は怒ったりしないからとか馬鹿なこと言って、女の子と飲みに行ってたし。……俺、文乃のちょっとした気遣いとか、優しいとこが好きで付き合ったのに、気付いたら……礼すら言わなくなってたよな」
その積み重ねが、事実が、文乃の疲弊した心にトドメを刺したことに、この男は気付いているのだろうか。
将吾はこんなふうに捲し立てる文乃を初めて見たせいか、しばし面食らったように黙り込んでいた。
やがて、後悔を滲ませた顔でかぶりを振る。
「……ごめん。周りに、言われた。あの日のことを抜きにしても、俺が文乃を大事にしてるようには、思えなかったって」
「……」
「俺の都合でデートも全然連れて行ってやんなかったし、文乃は怒ったりしないからとか馬鹿なこと言って、女の子と飲みに行ってたし。……俺、文乃のちょっとした気遣いとか、優しいとこが好きで付き合ったのに、気付いたら……礼すら言わなくなってたよな」