恋愛経験ゼロの御曹司様が札束で口説こうとしてきた
 そうして忙殺されながら三ヶ月が経った頃、昴は決断する。

 ──そうだ、助けてくれたお礼をしに行けば良い。そこで彼女ともう一度話せば、この感情が何か分かるかもしれない。

 そこからの行動は迅速であった。

 ひとまず菓子折りを用意した上で、以前郁人から言われた「お前は真面目すぎるから大金でもチラつかせたほうがスムーズに女の子と話せそうだよな」という言葉を不意に思い出し、アタッシュケースも持参して喫茶店へと向かったのである。

 それで……。

『……あの、すみません』
『はい?』

 運良く退勤のタイミングで文乃を見つけ、声を掛けた。

 振り返った彼女の、きょとんとした愛らしい顔を見た瞬間──。

『高良文乃さん、結婚を前提にお付き合いしてほしい』
『!?』

 口が勝手に動いていた。

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