恋愛経験ゼロの御曹司様が札束で口説こうとしてきた
何度思い返してみてもただの不審者である。文乃には怖い思いをさせてしまったことだろうと、昴は何度目かも分からぬ反省をした。
しかし、あの日思い切って行動したことに悔いはない。
今、文乃に交際を承諾してもらい、この上なく幸せな日々を送れているのは、あの決断あってこそなのだから。
『あ……昴さん! お仕事お疲れ様です』
仕事終わりに食事に誘って、そんな言葉を掛けてもらえるのも。
『昴さん、よく読書をされるって聞いたので。ブックカバーを作ってみたんですけど……うーん、柄が明るすぎましたかね』
『いえ問題ありません頂きます』
『あ、そ、そうですか?』
学生時代から小物を作るのが趣味だったという文乃の、お手製ブックカバーを贈ってもらえるのも。
『あの……お願いがありまして、昴さん』
『何でしょう』
『……手を繋いで歩いてみたいです』
『………………ぜひ』
初めてのデートで、一瞬意識が遥か彼方へ飛んでしまったぐらいには可愛いお願いをしてもらえたのも。
『すばるさん、ちょ、っと、待って』
昼間には決して見れない顔を拝めるのも──昴はそこで自分の頬を軽く叩いておいた。運転中に思い出すことではない。事故に遭う。
ともかく、彼が幸せの絶頂期にあることは誰もが認めることであった。
しかし、あの日思い切って行動したことに悔いはない。
今、文乃に交際を承諾してもらい、この上なく幸せな日々を送れているのは、あの決断あってこそなのだから。
『あ……昴さん! お仕事お疲れ様です』
仕事終わりに食事に誘って、そんな言葉を掛けてもらえるのも。
『昴さん、よく読書をされるって聞いたので。ブックカバーを作ってみたんですけど……うーん、柄が明るすぎましたかね』
『いえ問題ありません頂きます』
『あ、そ、そうですか?』
学生時代から小物を作るのが趣味だったという文乃の、お手製ブックカバーを贈ってもらえるのも。
『あの……お願いがありまして、昴さん』
『何でしょう』
『……手を繋いで歩いてみたいです』
『………………ぜひ』
初めてのデートで、一瞬意識が遥か彼方へ飛んでしまったぐらいには可愛いお願いをしてもらえたのも。
『すばるさん、ちょ、っと、待って』
昼間には決して見れない顔を拝めるのも──昴はそこで自分の頬を軽く叩いておいた。運転中に思い出すことではない。事故に遭う。
ともかく、彼が幸せの絶頂期にあることは誰もが認めることであった。