派手好きで高慢な悪役令嬢に転生しましたが、バッドエンドは嫌なので地味に謙虚に生きていきたい。
「いやあ、それにしても、色々と感慨深いものがありますね……いよいよ、僕達も魔法学園に入学ですか……」
「……そうですね。確かに、感慨深いものがあります」

 バルクド様は、魔法学園の方を見ながら、言葉の通り感慨深そうな顔をしていた。
 その気持ちは、わからない訳ではない。何れ、通うとわかっていたこの場所に来たことに、そういう感情が湧いてくることはおかしいことではないだろう。
 ただ、私としては、この魔法学園に通うということには、もっと特別な意味がある。ゲームで見ていたあの魔法学園に、私のこれからの運命を決める場所に来たというバルクド様とは異なる感慨深さがあるのだ。

「これから三年間、僕達はここで過ごすことになります……不安もありますが、期待もあります。楽しい学園生活になるといいですね」
「ええ、そうですね」

 バルクド様は、私に対して笑顔を向けてきた。それは、本当に心からの笑顔のように思える。
 婚約者になってから、彼とは結構な時間を過ごした。その中でわかったことだが、彼は本当に真面目で誠実な人物である。
 それは、ゲームの設定通りだ。そのため、わかっていたことではある。
 だが、やはり現実にそういう人物と接すると、しみじみと思う。彼は、素晴らしい人であると。
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