派手好きで高慢な悪役令嬢に転生しましたが、バッドエンドは嫌なので地味に謙虚に生きていきたい。
 リオーブもバルクド様も、その感情を抑えられなくなっていた。
 私は、こんなにも大切に思われているのか。私は、改めてそれを実感して、とても温かい気持ちになっていた。
 思えば、ゲームと同じような世界に迷い込んできて、色々なことを思ってきた。破滅の運命を回避したい。憧れの人達と一緒にいたい。そんな思い出が、どんどんと蘇ってくる。

「色々とありましたが……私から言えることは、ただ一つです」

 いつしか、私はこの世界に対する認識が改まった。ゲームの世界やゲームの登場人物ではなく、ただ自分が生きる世界として、ただ自分の友人として、認識するようになっていたのだ。
 それは、思えば不思議なことである。

「楽しかった。ただ、それだけです」

 私は、最後は笑っていようと思った。それが、この世界で出会った素晴らしき人々に私が最後に見せる表情として、一番相応しいものだと思ったからだ。

「……さらばだ。誇り高き者よ。俺……いや、我々はお前のことを決して忘れはしないだろう」

 ディゾール様の魔法で、アルフィアの魂は一つに戻った。彼は、その魂をそのまま私の中に入れてくる。
 これで、全てが終わりのだ。そう思いながら、私はゆっくりと目を瞑るのだった。
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