派手好きで高慢な悪役令嬢に転生しましたが、バッドエンドは嫌なので地味に謙虚に生きていきたい。
「あなたの気持ちは、わからない訳じゃない……でもね、あなたがどれだけ辛い思いをしていたとしても、それは他人を傷つけていい理由にはならないんだよ」
「……私に、説教しようというの?」
「説教か……そうじゃないんだけど、そう思うのかな?」
「な、なんなのよ、一体……」

 私の態度に、アルフィアは困惑していた。牙を向いても意に介さないので、混乱しているのだろう。
 正直言って、今の私にとって彼女のその態度は怖いものではない。この世界で様々な経験した今の私には、彼女の牙は大したものではないと思えるのだ。

「アルフィア、あなたはもう一度自分が何をしたのかをよく考えなければならないと思う。誰かが気に入らないから、嫌なことを言ったりしたりする。それをされてどんな気持ちになるのか、あなたはわかっているはずだよ?」
「……そ、それは……」
「そう……あなたは自分がされて嫌だったことを他人にしているだけ。それが愚かしいことであるということは、あなたにもわかるよね?」
「……」

 私の言葉に、アルフィアは驚いたような表情をしていた。彼女自身は、今までそんなことには気づいてはいなかったのだろう。
 自分自身の行いを見直すことは、とても難しい。そのため、彼女もそれに気づくことはできなかったのだろう。
 だが、だからといって、他人も指摘することはできなかったはずだ。高い地位を持つアルフィアに指摘することは勇気がいることだろうし、そもそも彼女のその事情を知っている人も少ないのだから。
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