派手好きで高慢な悪役令嬢に転生しましたが、バッドエンドは嫌なので地味に謙虚に生きていきたい。
 私は、町を見渡せる丘に来ていた。
 私は、元にいた世界に戻って来た。あの『Magical stories』の世界から、日本という国へと帰って来たのだ。

「どういうことなんだろう……?」

 姉曰く、私は交通事故で重体になり、数日間目を覚まさなかったらしい。お医者さんから、二度と目覚めない可能性もあるといわれて、姉はとても心配してくれていたようである。
 結果的に、私は早くに目覚めることができたようだ。本当によかったと私に涙ながらに語ってくれた姉の姿は、今でも鮮明に思い出せる。
 リハビリは大変だったが、姉の支えもあって、今はこうやって元の生活に戻れている。それは、喜ばしいことだ。だが、私の心には少しだけ気になっていることが残っている。

「あれは、夢だったんだろうか……」

 思い出すのは、あの『Magical stories』の世界であった出来事のことだ。
 あれは、全て夢だったのだろうか。交通事故にあった私が憧れた世界に転生するという夢だった。そういうことなのだろうか。

「私には、その記憶がはっきりと残っている……でも、魔法が使える訳でもないし……私があの世界にいたという証明なんて、何も残っていない……」

 私の記憶以外に、私があの世界にいたということを証明するものは何も残っていない。
 そのため、私は自身が持てなくなっていた。あの世界が本当にあって、そこに自分がいたのかどうかということに。
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