派手好きで高慢な悪役令嬢に転生しましたが、バッドエンドは嫌なので地味に謙虚に生きていきたい。
「……やっぱり帰ってもいいかしら?」
「え?」
「なんというか、ここにこれ以上いても無駄な気がするし……」

 そこで、アルフィアが私にそのようなことを言ってきた。
 彼女は微妙な表情をしている。その視線は、メルティナの方に向いている。やはり、彼女がいると気まずいのだろうか。

「アルフィア様……あのですね」
「うっ……」

 そんなアルフィアに対して、メルティナはゆっくりと視線を向けた。その視線には、なんだか含みがある。
 ただ、それはなんだか変だ。彼女の視線は、何故か少し怖いのである。

「メルティナ、あなたね……こんな時に、あんなことは言わないでよね?」
「……ああ、すみません。つい、いつのも癖で」
「うん?」

 アルフィアとメルティナの会話に、私は違和感を覚えた。
 それは、ファルーシャも同じようだ。彼女も、きょとんとしている。
 私とファルーシャは顔を見合わせた後、アルフィアとメルティナを交互に見た。すると、二人は少し気まずそうな笑みを浮かべる。

「その……シズカさんには秘密にしていたんですけど、私はアルフィア様と約束を交わしていたのです」
「約束?」
「ええ、その……私は、あなただった訳じゃない。それが、私に戻った。ということは、色々と不都合があるでしょう」
「不都合?」

 アルフィアの言葉に、私達は首を傾げた。彼女が言っている不都合というものが、どういうものなのかわからなかったからだ。
< 274 / 334 >

この作品をシェア

pagetop