派手好きで高慢な悪役令嬢に転生しましたが、バッドエンドは嫌なので地味に謙虚に生きていきたい。
「前々から話が出ていたとはいえ、いよいよ決まりましたね。僕とあなたは、これで晴れて婚約者ということですね」
「ええ、そのようですね……」

 私が十歳の春、バルグド様との婚約が決まった。彼との婚約は、前々から話が出ていた。その時点で確信は持っていたため、改めて彼と会っても、私は特に感慨深さというものは覚えていない。

「あの……もしかして、嫌でしたか?」
「え? いえ、そんなことはありません」

 そんな私の態度に、バルクド様は違和感を覚えたようだ。確かに、見ようによっては、そう思われるかもしれない。私は、あまり明るくはないからだ。
 だが、こういう時にどういう反応をするべきなのか、私はよくわかっていない。喜ぶのが正解なのだろうか。

「ただ……なんというか、あまり実感が湧いてこないのです。婚約や結婚というものは、いずれ訪れるとは思っていたものの、現実味がないというか……」
「なるほど、確かに、そう思うのは無理もないかもしれませんね。何しろ、親同士が決めた婚約ですから、僕達はあまり関わっていない訳ですし……」

 私が咄嗟に考えた言い訳に、バルクド様は納得してくれた。恐らく、これで誤魔化せただろう。とりあえず、これで一安心だ。
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