派手好きで高慢な悪役令嬢に転生しましたが、バッドエンドは嫌なので地味に謙虚に生きていきたい。
 咄嗟に考えたといっても、言っていることは割と私の本当の気持ちである。正直言って、婚約と急に言われてもあまり実感はない。なんというか、現実味がないのである。
 それは、私が日本という国で生きていたことも関係しているだろう。私が生きていた時代の日本では、親同士が婚約を決めるというものは一般的ではなかった。だから、猶更実感が湧かないのかもしれない。

「といっても、これは僕達の義務のようなものですから、受け入れるしかないのだと思いますけど……」
「そうですね……そうだと思います」

 バルクド様の言っている通り、この世界での婚約は貴族や王族にとっての義務のようなものである。実感がなくても、それは受け入れなければならないのだろう。
 ただ、私からしてみれば、この婚約はあまり受け入れたい現実ではなかった。
 彼との婚約は、ゲームの中でも成立している。ただ、彼のルートではその婚約は破棄されて、アルフィアは追放される。
 私がプレイしたルートであるため、この婚約は中々怖い。あのルートのようになるのではないか。その恐怖が、ずっとついてくるからだ。もちろん、そうなるつもりは微塵もないのだが。
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