相思相愛・夫婦の日常~マオさん♡ヒメさん編~
マオさん、恐ろしいです
今日は、風谷との食事の日。
真皇は指定された、会員制のレストランに向かった。

「━━━━━碇部様ですね」
オーナーらしき男性が、丁寧に頭を下げてきた。

「ん」
頷くと、席まで誘導される。
奥の個室のドアをノックして開けた。

「失礼します!
碇部様、いらっしゃいました」

中には、風谷ともう一人貫禄のある男性が座っていた。

「マオさん!そこ、座ってよ」
風谷が手招きし、真皇は頷いて席に座った。

「風谷、この人は?」
足を組み、もたれて、目で男性を指す。

「若頭の、國瀬さん!
組長の孫だ。
年は俺と変わらないんだよ!」

「國瀬です」

「へぇー」

「君が“あの”碇部 真皇か」

「あぁ」

「━━━━━フフ…凄いね」
足を組みもたれたまま淡々と答える、真皇。
そんな真皇に、苦笑いをして煙草を咥えた國瀬。
後ろに控えていた組員が、火をつける。

「は?」

「風谷でさえ、俺には畏まって“そんな態度”見せないのに(笑)
見ろよ。足を組むどころか、背筋までピンとしてる(笑)」
煙草を持ち、煙を天井に吐いて、顎で風谷を指した。

「あんたが若頭だろうと、俺には関係ない。
風谷にとっては尊敬に値するのかもしれないが、俺から見ればただのおっさんだ」

「フフ…そりゃそうだな(笑)
風谷、確かに面白い男だな!」

「はい…!」

「しかし、怖くないのか?」

「は?」

「國瀬組って言えば、それなりの組織だぞ?
お前程度、簡単に潰すこともできる」

「そうだな。
簡単だな」

「だろ?
ヤクザらしい、汚ないやり方をすることもできる」

「あぁ」

「例えば、お前の嫁を拐うとか?
嫁の会社を潰すとか、まぁ色々ある」

「やりたいならやればいい」

「ほぅ!」

「でも……」

「ん?」

「“ただでは”やられない」
真皇の視線が鋭く尖り、雰囲気が恐ろしく落ちた。

「へぇー」

「お前も、お前の組もみちずれだ」

「………」

「………」

「………フッ…!!フフ…ハハハーーーッ!!」
噴き出し、爆笑する國瀬。

「………」
怪訝そうに見る、真皇。

「風谷」

「はい」

「良いダチを見つけたな、お前」

「フフ…はい!」

「碇部の凄いところは、今の言葉全てに“何の”ハッタリもないところだ。
きっと、本当にこいつはやる……!」

「はい。恐ろしい奴です…!」

「碇部」

「ん?」

「まぁ、仲良くしてくれや!
━━━━━大丈夫。君が俺達を裏切らない限り、君や嫁にも手を出さない」

「良いけど……
困るんだよね……」

「ん?何故?」

「俺の友達、ヤクザばっかなんだ。
國瀬組の幹部ばっかを、風谷が紹介するから。
ヒメさんに益々隠し事が増える」

「フフ…そうか(笑)」

「笑い事じゃないよ……」
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