相思相愛・夫婦の日常~マオさん♡ヒメさん編~
それもそのはず、姫華は“可愛い”と言われ慣れているところがある。

そのため“可愛い”と言われただけでは喜ばない。
それは、知り合い相手でもそうだ。
もちろん可愛いと言われることは嬉しいし、お礼も言う。
でも喜んだり、ましてや顔を赤くするようなことはない。

“可愛い”の言葉に素直に顔を赤くし、喜ぶのは真皇に対してだけだ。


「ヒメさん!」
「はい」

「デート、行きましょう!
━━━━━荷物を部屋に運んでおいてくれ」
少し乱暴にキャリーバッグを従業員に渡し、姫華の手を掴んだ真皇。
そのまま、引っ張った。

「え………!!?ま、マオさん!?」

「いってらしゃーい!!」
後ろで、風谷の楽しそうな声が聞こえた。


しばらく歩いて、ピタリと立ち止まった真皇。
「━━━━━ヒメさん」

振り向き、名を呼ぶ真皇の表情は切なく歪んでいた。
「マオさん?」

「ごめんなさい、こんな強引なことをしてしまって」

「いえ、大丈夫ですよ?
でも、どうしたんですか?」

「風谷を……風谷なんかに、惚れないでください……!」

「………」

「………」

「………へ…!?ほ、惚れ…??」
放心状態の姫華。
変な声が出た。

「はい」

「私が好きなのは、マオさんだけです」

「でも、風谷に顔を赤くしてました」

「それは、可愛いって言っていただいたからで。
単なる、褒めてもらったからってだけですよ?」

「でも、他の人には顔を赤くしませんよ?」

「そうですか?
そりゃ、ナンパとかは嬉しくないし…」

「それは、そうですよ。
でも知り合いの人間にも、あんな照れたりしません!」

「そんなことないですよ。
やっぱ…“可愛い”って言われるのは嬉しいです」

「………」

「マオさん?」

「…………わかってます。
ガキみたいな嫉妬してること。
こんなの、みっともないことも。
でも、不安になるんです。
ヒメさんは、俺のモンです。
俺が見つけた姫です。
ヒメさんが、俺以外の人間に微笑むだけで嫉妬でおかしくなる」

「━━━━━マオさん!!!」

「え?ひ、ヒメ…さん?」

「何度も言ってますよね!?
私が好きなのは、マオさんだけですって!!!
それに、マオさんは私が“可愛い”の一言で心変わりするとでも思ってるんですか!!?
冗談はやめてください!!
マオさんは、私の運命の人です!
マオさんが“こんにちは!”って声かけてくれたあの時……一瞬で恋に落ちました。
おかしな話だけど、本能でわかりました。
マオさんとなら、幸せになれるって!
だから━━━━絶対、離れません!
マオさんを誰にも渡しません!!
私はマオさんのモノで、マオさんは私のモノです!」

姫華は涙目になりながら、必死に真皇に思いをぶつけた。
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