相思相愛・夫婦の日常~マオさん♡ヒメさん編~
その頃真皇は、買い物に出ようとしていた。

姫華のために、今日はどんな夕食にしようかと考えながら近くのスーパーまで歩いて向かう。

スーパーに着くと、まず真皇は外に備え付けてある灰皿の前で煙草を吸う。
家では、できる限り吸わないようにしたいからだ。

真皇が吸っていると、大抵誰も近づいてこない。
それ程、真皇の顔や雰囲気は恐ろしい。

でもそれでも、声をかけてくる人間もいる。

「兄ちゃん、火ぃくれや」

「は?嫌」

「えーいいじゃねぇか!」

「………」
真皇は無言で、灰皿に煙草を潰した。
そして男を見据えながら、煙をゆっくり吐いた。

「え………」
真皇の雰囲気に、男がたじろいだ。

「嫌って言ってるだろ?
お前、耳聞こえないのか?」

「す、すみません!」
慌てて頭を下げる。

「そこ退け」
真皇は至って冷静だが、凄まじい勢いだ。

男は「は、はい!すみません!」と言い、逃げるように去っていった。


買い物を終え、両手にエコバッグを抱えて帰路に着く。
すると、黒塗りの高級車が走ってきてゆっくり真皇の前に止まった。

運転席が開き、男が「マオさん!お疲れっす!」と出てきた。

「あ」
真皇も立ち止まる。
そして男が、後部座席のドアを開けた。

「マオさん、お疲れ~」
中から顔を出した男。
真皇に微笑んだ。

風谷(かぜたに)、お疲れ」

國瀬(くにせ)組の本部長で、真皇の友人・風谷。
しかし年は11歳離れていて、もちろん風谷が年上だ。
でも真皇は、タメ口で接する。

「買いもん?
送ってやろうか?」

「は?ヤクザの車に乗るわけないだろ?
何処で誰が見てるかわからない。
ヒメさんに迷惑がかかることはしない」

「フフ…そりゃそうだ(笑)
また、飲みに行こうよ!」

「いいけど、昼しか無理。
夜はヒメさんがいる。
ヒメさんがいるのに、離れるなんて考えられない」

「わかってるって!
相変わらずだねー
じゃあ……」
運転していた男に目で合図する。

「えーと……明後日…なら、大丈夫っす!」

「じゃあ、明後日だ!
いい?」

「明後日…ん。わかった。
じゃあね」
真皇は頭の中でスケジュールを確認し、答えた。
そして去っていく。

するとその背中に、風谷が呼びかけるように言った。
「その時にさー
会ってほしい人がいるんだ!」

ピタリと立ち止まった真皇は振り返る。
ため息をつき、風谷を鋭く見た。

「國瀬組には入らない。
ヒメさんにも絶対に会わせない。
ヒメさんに勝手に会いに行かない」

「守るよ!君を怒らせたくないから。
君は、とんでもない男だからね(笑)」
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