いじめられ少女が腹黒優等生の一軍男子に溺愛されるまでの青春ラブストーリー【高嶺の君とキズナを紡ぐ】
ep41 窓際の夜鷹
クラスの中に存在する階級は、それぞれが持つ容姿や性格や特技、所属するグループによって暗黙で決められる。
新島悠真や篠原咲乃、日下英明、澤田加奈など、見た目が良く社交的な人気者は、最も高い階級に分類され、発言権と自由な振る舞いが認められている。
中間層にいる大半の生徒は、階級の高い生徒の不満さえ買わなければ発言権や振る舞いの自由を認められているが、大人しく口下手な友達の少ない者は最も低い階級に分類されて、クラスメイトの不評を買わないよう日々息を殺して目立たないように暮らしていた。
西田晃良はゲームとアニメとプラモデルが大好きで、人付き合いが苦手な何処にでもいる普通の男子中学生だ。
西田は自分の席でスマホゲームをして、朝の気怠い時間を過ごしていた。耳につけたイヤホンが周囲の騒音をかき消して、アプリの美少女の声をはつらつと届けている。
『おはよ、テルくんっ。今日もがんばろ!』
スマホの中の美少女が西田に向かって微笑んだ。西田はアプリの中の美少女――ちえちゃんをつついて遊ぶと、ちえちゃんは驚いたり笑ったり恥ずかしがったりと、くるくる表情を変えて反応した。
西田は毎日、教室でちえちゃんと過ごしていた。友達はいなかった。入学したての頃はあんなに友達を沢山作ろうと意気込んでいたのに、気づくと西田の友達はアプリゲームのちえちゃんだけになっていた。
画面をタップすると、ライブ2Dで動くちえちゃんが恥ずかしそうに笑う。西田は、早く彼女をレベルアップさせようと、ちえちゃんをつつきまくって親密度を上げた。プレイヤーとの“ふれあい”によって親密度を上げると、ちえちゃんのレベルが上がるシステムになっているのだ。
「新島くん、おはよ。もう、遅いじゃん!」
「篠原くん、昨日の宿題で分からないところがあったんだけど、教えてくれない?」
教室が突然色めき立ったと思ったら、人気ツートップのお出ましのようだ。女子達は頬を染め、きゃっきゃとはしゃいでいる。
中学生の平均身長よりも高めの細身な体躯。いつも上がった口角に甘い笑顔を浮かべた童顔の少年は新島悠真。スポーツ万能でテニス部に所属している彼は、運動部員にも関わらず髪にゆるいパーマをかけ、制服をお洒落に着崩している。女子にモテようと必死な、中身が空っぽな奴。西田の嫌いな人種だ。
対して、白い陶器のような肌をした、きれいな顔立ちをした少年の方は篠原咲乃。いつも静かな微笑を湛え、穏やかな空気を身にまとっている。勉強が出来る上にスポーツも完璧にこなす。教師からも同級生からも信頼され慕われる、典型的な優等生だ。こちらも西田の嫌いな人種である。
悠真と篠原咲乃は、朝から日下たちと一か所に固まって、女子数名を交えて楽し気に話していた。
「篠原くん、修学旅行の体験授業は何にするの?」
「清水焼の陶芸体験だよ。澤田さんは何にしたの?」
「うちらは友禅染体験にしたんだ」
澤田加奈は、篠原と話すのが楽しくてたまらないらしい。髪を仕切に触っては、嬉しそうに頬を染めて笑っている。
西田は、澤田加奈がクラスメイトの中で一番可愛いと思っていた。彼女が明らかに篠原咲乃を意識しているのを見て、心の中で落胆を感じながらも、誰かの興味を引こうとしている彼女が一層可愛く見えて思わず見惚れてしまった。
もちろん、わかっている。あんな表情は、篠原だから見せるのだ。もし相手が自分だったら、適当に愛想良くはしてくれるだろうが、あんなに愛らしい表情をしてはくれなかっただろう。
『テルくん、わたしテルくんのためにがんばっちゃった♪ もっと褒めて?』
よそ見をしているうちに時間が経過していたようだ。イベントが終了し、レベルが上がって、衣装チェンジしたちえちゃんが上目遣いで西田の顔を覗き込んでいる。
「偉い偉い、ちえちゃん」
西田は小さく呟いて、ちえちゃんの頭を撫でた。
新島悠真や篠原咲乃、日下英明、澤田加奈など、見た目が良く社交的な人気者は、最も高い階級に分類され、発言権と自由な振る舞いが認められている。
中間層にいる大半の生徒は、階級の高い生徒の不満さえ買わなければ発言権や振る舞いの自由を認められているが、大人しく口下手な友達の少ない者は最も低い階級に分類されて、クラスメイトの不評を買わないよう日々息を殺して目立たないように暮らしていた。
西田晃良はゲームとアニメとプラモデルが大好きで、人付き合いが苦手な何処にでもいる普通の男子中学生だ。
西田は自分の席でスマホゲームをして、朝の気怠い時間を過ごしていた。耳につけたイヤホンが周囲の騒音をかき消して、アプリの美少女の声をはつらつと届けている。
『おはよ、テルくんっ。今日もがんばろ!』
スマホの中の美少女が西田に向かって微笑んだ。西田はアプリの中の美少女――ちえちゃんをつついて遊ぶと、ちえちゃんは驚いたり笑ったり恥ずかしがったりと、くるくる表情を変えて反応した。
西田は毎日、教室でちえちゃんと過ごしていた。友達はいなかった。入学したての頃はあんなに友達を沢山作ろうと意気込んでいたのに、気づくと西田の友達はアプリゲームのちえちゃんだけになっていた。
画面をタップすると、ライブ2Dで動くちえちゃんが恥ずかしそうに笑う。西田は、早く彼女をレベルアップさせようと、ちえちゃんをつつきまくって親密度を上げた。プレイヤーとの“ふれあい”によって親密度を上げると、ちえちゃんのレベルが上がるシステムになっているのだ。
「新島くん、おはよ。もう、遅いじゃん!」
「篠原くん、昨日の宿題で分からないところがあったんだけど、教えてくれない?」
教室が突然色めき立ったと思ったら、人気ツートップのお出ましのようだ。女子達は頬を染め、きゃっきゃとはしゃいでいる。
中学生の平均身長よりも高めの細身な体躯。いつも上がった口角に甘い笑顔を浮かべた童顔の少年は新島悠真。スポーツ万能でテニス部に所属している彼は、運動部員にも関わらず髪にゆるいパーマをかけ、制服をお洒落に着崩している。女子にモテようと必死な、中身が空っぽな奴。西田の嫌いな人種だ。
対して、白い陶器のような肌をした、きれいな顔立ちをした少年の方は篠原咲乃。いつも静かな微笑を湛え、穏やかな空気を身にまとっている。勉強が出来る上にスポーツも完璧にこなす。教師からも同級生からも信頼され慕われる、典型的な優等生だ。こちらも西田の嫌いな人種である。
悠真と篠原咲乃は、朝から日下たちと一か所に固まって、女子数名を交えて楽し気に話していた。
「篠原くん、修学旅行の体験授業は何にするの?」
「清水焼の陶芸体験だよ。澤田さんは何にしたの?」
「うちらは友禅染体験にしたんだ」
澤田加奈は、篠原と話すのが楽しくてたまらないらしい。髪を仕切に触っては、嬉しそうに頬を染めて笑っている。
西田は、澤田加奈がクラスメイトの中で一番可愛いと思っていた。彼女が明らかに篠原咲乃を意識しているのを見て、心の中で落胆を感じながらも、誰かの興味を引こうとしている彼女が一層可愛く見えて思わず見惚れてしまった。
もちろん、わかっている。あんな表情は、篠原だから見せるのだ。もし相手が自分だったら、適当に愛想良くはしてくれるだろうが、あんなに愛らしい表情をしてはくれなかっただろう。
『テルくん、わたしテルくんのためにがんばっちゃった♪ もっと褒めて?』
よそ見をしているうちに時間が経過していたようだ。イベントが終了し、レベルが上がって、衣装チェンジしたちえちゃんが上目遣いで西田の顔を覗き込んでいる。
「偉い偉い、ちえちゃん」
西田は小さく呟いて、ちえちゃんの頭を撫でた。