いじめられ少女が腹黒優等生の一軍男子に溺愛されるまでの青春ラブストーリー【高嶺の君とキズナを紡ぐ】
悠真たちのグループにいる咲乃は、なんて華やかなんだろう。まるで、悠真と二人組のアイドルみたいだ。一緒にいると、お互いの容姿の良さを引き立て合って神々しさすら感じる。
彩美が感嘆に浸っていると、悠真と目が合った。
「あ、山口さんも来たんだ? なんか、久しぶりだね」
悠真が甘い顔で笑いかける。彩美は愛らしい顔でにこりと笑った。
「新島くんこんにちは」
彩美が挨拶を返すと、それを見ていた悠真の彼女である遠藤沙織に睨まれた。
こっわ。彼氏取られないように必死すぎ。
彩美はにこにこ笑顔を絶やさずに、心の中でつぶやいた。
悠真は彩美の初恋だった。というより、女子の初恋はほとんど悠真が相手だったのではと思うほど、昔から彼は人気だった。
中学生になって、身長が伸びて声も低くなって、小学生の時よりも更に魅力を増した悠真は、仲良しグループの中にいた遠藤沙織と付き合い始めた。
悠真と沙織が付き合っていると知った時、彩美はショックのあまり、何日も食事が喉を通らないほど落ち込んだものだ。しかしそれも、咲乃が現れてからは、悠真への恋心など綺麗さっぱり忘れてしまったのだが。
もう、好きな人を他の女なんかに取られたくない。篠原くんは、絶対に私のものにして見せる。
彩美は固く心に決めると、咲乃の肩をちょんちょんと突いた。
「篠原くん、話があるんだけど、今大丈夫?」
「どうしたの?」
まっすぐ咲乃の黒い瞳に見つめられて、自分で話しかけておきながら心臓が軽く跳ねた。
「あのね、数学でわからないところがあるの。教えてもらえない?」
必殺上目遣いで、咲乃に熱視線を送る。大概の男子はこれで落ちるのだが、しかし咲乃は、いつものように柔らかく笑っただけだった。
「いいよ、今見ようか?」
ありがたいが違う! 彩美は冷や汗をきながら、両手をぶんぶん顔の前で振った。
「いっ、今じゃなくていいの。もしよかったら、放課後一緒に勉強しない? 家じゃ捗らないし、図書室で勉強しようかなって思ってて……」
本当は、稚奈のように家に誘いたかったのだが、さすがに初日で自分の家に誘うのはハードルが高すぎる。咲乃だって、いきなり家に誘われたら驚くだろう。図書室で勉強というのは、彩美なりの精一杯の妥協だった。
「ごめん。放課後は用事があるから駄目なんだ。折角誘ってくれたのに、申訳がないけれど」
「えっ」
用事。また用事だ。いつもそればっかり。前までは納得して諦めていたけど、稚奈とのことを知った以上、彩美には納得ができなかった。
「じゃ、じゃあ、お休みの日は? 私、篠原くんの予定に合わせられるよ?」
今回は、絶対に引き下がるわけにはいかない。なんとしても、咲乃との関係を縮める一歩が欲しい。
「ごめん。休みの日もちょっと……」
どうして。
彩美の脳内を埋め尽くす、数多の疑問。
咲乃はいつも、彩美を寄せ付けない。友達だと言いながら、彼のプライベートには一切入らせてくれない。聞けば応えてくれる回答は無難なものばかりだ。
いつも笑顔で接してくれるのに、それ以外の表情を、感情を、見せてくれたことがない。私のことを聞いてくれたこともない。興味を持ってもくれない。でもそんなの、友達なんて言わない。
ごめんね、と改めて咲乃が謝った。そうやって簡単に謝る割に、それ以上は譲るつもりはないと言われているように感じて、それが凄く。
「本田さんとは、一緒に勉強してるのに」
ずるい。
「それ、誰に聞いたの?」
咲乃の目が、警戒するように彩美を見つめた。自分が言ってしまったことに血の気が引く。やってしまったと思うのに、なぜだか、やっと認識してもらったような不思議な感覚になった。もしかすると、彩美は今まで、きちんと咲乃に認識してもらえていなかったのかもしれない。
「え……えっと……」
「本田さん?」
彩美が狼狽えていると、鋭く核心をついてくる。彩美は言葉を失った。
「本田さんとは、共通の友人を通して知り合ったんだ。勉強を見ているって言っても、その友人のついでだし、二人きりで勉強しているわけじゃない」
「そ、その友人って……?」
「それは山口さんには関係ないよね?」
急に突き放されるような厳しい言い方に、彩美は息を呑んで首をすくめた。
「ごめん、これ以上は話したくない」
拒絶。彩美を見た咲乃の目には、明らかにそれがあった。固まっている彩美の横を過ぎる。
視界から彼の姿が消えたところで、ようやく彩美は我に返った。
「しっ、篠原くんっ! まって……!」
教室を出て行く咲乃を必死に呼び止めた。しかしそれは虚しく響くだけで、教室から出ていく咲乃を止めることはできなかった。
彩美が感嘆に浸っていると、悠真と目が合った。
「あ、山口さんも来たんだ? なんか、久しぶりだね」
悠真が甘い顔で笑いかける。彩美は愛らしい顔でにこりと笑った。
「新島くんこんにちは」
彩美が挨拶を返すと、それを見ていた悠真の彼女である遠藤沙織に睨まれた。
こっわ。彼氏取られないように必死すぎ。
彩美はにこにこ笑顔を絶やさずに、心の中でつぶやいた。
悠真は彩美の初恋だった。というより、女子の初恋はほとんど悠真が相手だったのではと思うほど、昔から彼は人気だった。
中学生になって、身長が伸びて声も低くなって、小学生の時よりも更に魅力を増した悠真は、仲良しグループの中にいた遠藤沙織と付き合い始めた。
悠真と沙織が付き合っていると知った時、彩美はショックのあまり、何日も食事が喉を通らないほど落ち込んだものだ。しかしそれも、咲乃が現れてからは、悠真への恋心など綺麗さっぱり忘れてしまったのだが。
もう、好きな人を他の女なんかに取られたくない。篠原くんは、絶対に私のものにして見せる。
彩美は固く心に決めると、咲乃の肩をちょんちょんと突いた。
「篠原くん、話があるんだけど、今大丈夫?」
「どうしたの?」
まっすぐ咲乃の黒い瞳に見つめられて、自分で話しかけておきながら心臓が軽く跳ねた。
「あのね、数学でわからないところがあるの。教えてもらえない?」
必殺上目遣いで、咲乃に熱視線を送る。大概の男子はこれで落ちるのだが、しかし咲乃は、いつものように柔らかく笑っただけだった。
「いいよ、今見ようか?」
ありがたいが違う! 彩美は冷や汗をきながら、両手をぶんぶん顔の前で振った。
「いっ、今じゃなくていいの。もしよかったら、放課後一緒に勉強しない? 家じゃ捗らないし、図書室で勉強しようかなって思ってて……」
本当は、稚奈のように家に誘いたかったのだが、さすがに初日で自分の家に誘うのはハードルが高すぎる。咲乃だって、いきなり家に誘われたら驚くだろう。図書室で勉強というのは、彩美なりの精一杯の妥協だった。
「ごめん。放課後は用事があるから駄目なんだ。折角誘ってくれたのに、申訳がないけれど」
「えっ」
用事。また用事だ。いつもそればっかり。前までは納得して諦めていたけど、稚奈とのことを知った以上、彩美には納得ができなかった。
「じゃ、じゃあ、お休みの日は? 私、篠原くんの予定に合わせられるよ?」
今回は、絶対に引き下がるわけにはいかない。なんとしても、咲乃との関係を縮める一歩が欲しい。
「ごめん。休みの日もちょっと……」
どうして。
彩美の脳内を埋め尽くす、数多の疑問。
咲乃はいつも、彩美を寄せ付けない。友達だと言いながら、彼のプライベートには一切入らせてくれない。聞けば応えてくれる回答は無難なものばかりだ。
いつも笑顔で接してくれるのに、それ以外の表情を、感情を、見せてくれたことがない。私のことを聞いてくれたこともない。興味を持ってもくれない。でもそんなの、友達なんて言わない。
ごめんね、と改めて咲乃が謝った。そうやって簡単に謝る割に、それ以上は譲るつもりはないと言われているように感じて、それが凄く。
「本田さんとは、一緒に勉強してるのに」
ずるい。
「それ、誰に聞いたの?」
咲乃の目が、警戒するように彩美を見つめた。自分が言ってしまったことに血の気が引く。やってしまったと思うのに、なぜだか、やっと認識してもらったような不思議な感覚になった。もしかすると、彩美は今まで、きちんと咲乃に認識してもらえていなかったのかもしれない。
「え……えっと……」
「本田さん?」
彩美が狼狽えていると、鋭く核心をついてくる。彩美は言葉を失った。
「本田さんとは、共通の友人を通して知り合ったんだ。勉強を見ているって言っても、その友人のついでだし、二人きりで勉強しているわけじゃない」
「そ、その友人って……?」
「それは山口さんには関係ないよね?」
急に突き放されるような厳しい言い方に、彩美は息を呑んで首をすくめた。
「ごめん、これ以上は話したくない」
拒絶。彩美を見た咲乃の目には、明らかにそれがあった。固まっている彩美の横を過ぎる。
視界から彼の姿が消えたところで、ようやく彩美は我に返った。
「しっ、篠原くんっ! まって……!」
教室を出て行く咲乃を必死に呼び止めた。しかしそれは虚しく響くだけで、教室から出ていく咲乃を止めることはできなかった。