いじめられ少女が腹黒優等生の一軍男子に溺愛されるまでの青春ラブストーリー【高嶺の君とキズナを紡ぐ】
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数日前から竹内が学校に来なくなった。村上のいじめに耐えられなくなったようだ。日に日にいじめは酷くなり、最近は村上のサンドバッグ状態だったため無理もない。
竹内を庇った時から、村上の篠原への不満は一層強くなっていた。正義の味方を気取る篠原が目障りのようなのだ。しかし、悠真から「篠原に手を出すな」と命令されている限り、村上は篠原に対して何もできない。
なんで、悠真がそこまで篠原を庇うのか、日下にはわからなかった。考えてみれば、悠真のことを何でも知っているような気でいて、実は何も知らなかったんじゃないか。悠真の幼馴染で、一番の親友なのだと自負していたはずだったのに、いつから変わってしまった?
「お前、篠原んとこのクラスの奴じゃん!」
ある朝、教室まで廊下を歩いていると、全く空気の読まない能天気な顔が、日下にむかって「よっ」と手をあげた。日下は一瞬、そいつが誰だかわからなかった。少しして、篠原の知り合いだったことを思い出す。たまに学校で一番可愛いと評判の山口さんと教室に来ていた。
日下が記憶の片隅から情報を引っ張り出しているうちに、神谷が満面の笑みで近づいてきた。尻尾を振ってきそうな勢いだ。少々犬っぽい。先程まで難しいことを考えていた分、まったく何も考えていなさそうな奴が近づいてきて拍子抜けしてしまう。
「えーっと、確か、神谷……だったよな?」
「そ! 俺、神谷亮。お前って、篠原と仲良かった奴だよな?」
「あー、まぁ……」
仲良かったと言われると、少々抵抗がある。日下は篠原に対して、あまり好意的な感情は抱いていない。加奈が夢中になっているのもあるし、何より悠真がおかしくなったのは、去年、篠原が転校してきてからだと思うからだ。