いじめられ少女が腹黒優等生の一軍男子に溺愛されるまでの青春ラブストーリー【高嶺の君とキズナを紡ぐ】
「篠原くんに嫌われたらとか、変に思われたら嫌だなって、そればっかり気にしちゃって……。あっ、す、すいません、気持ち悪いですよね!? ブスがなに意識しちゃってんのって感じですよね!? で、でも、別に恋愛的な意味で言ったじゃないんで!!」
慌てて訂正して、ハハハとこぼれた笑いが白々しく響く。どこまで滑稽なんだろう、わたしは。篠原くんに嫌われたくなくて、必死に取り繕っている。
「……わかってるんです。わたしは篠原くんといる資格なんかないって」
恥ずかしくて俯いて、服の裾で手汗をにぎりつつ続けた。
「わたしなんか、篠原くんと関わっていい人間じゃないって」
わたしは、篠原くんが怖かった。わたしと違って、篠原くんは完璧で、そんな篠原くんに嫌われるのはすごく怖かったから。もう、誰かに嫌われて、あんな想いをしたくない。わたしなんて、普通にしていても誰かを不快にさせてしまう。
「……ただ、わたしは……仲良く、なりたかったんです……」
ブタにしては、過分な望みだ。篠原くんに嫌われたくなかった上に、仲良くなりたいだなんて。口に出すのも恥ずかしいくらいに。
怖いぐらいの沈黙だった。息を吐くのもはばかれるくらい。篠原くんの顔も見れない。
「約束して、津田さん。俺のこと、もう怖がったりしないって」
「……へ?」
おどろいて篠原くんの顔を見る。こんな恥ずかしい姿をさらしても、篠原くんの顔は優しかった。
「俺は、津田さんが思ってるほど完璧じゃないよ。俺だって、ダメなところは沢山あるし」
篠原くんは、わたしに小指を差し出して、ふわりと柔らかく微笑んだ。
「俺も、津田さんのこと嫌ったりしないから。だから、約束」
篠原くんは、わたしのこと気持ち悪くないのだろうか。困惑して、差し出された小指と篠原くんの顔を交互に見る。篠原くんの瞳の中にさした光は、鮮やかで温かくて、とても優しい色をしていた。
「……は、はい……わかり……ました」
恐々小指を絡ませる。わたしなんかが篠原くんの指に触れるのは申し訳なくて、遠慮がちに絡めると、篠原くんの長い指がしっかりわたしの指をつかまえた。
上下に揺らして、ゆびきりげんまん。
「あらためてよろしくね、津田さん」
ふわりと笑った篠原くんの顔があまりにも眩しすぎて、わたしは思わずまばたきした。
「……は、はい。お、おねがいします」
なんだか、信じられない。こんなブスを受け入れてくれたことが。
「これでもう、畏れ多いとか言って遠慮したり、俺を遠ざけたりするのはやめてね」
「が、がんばります」
篠原くんと対等でいるなんて絶対無理だと思うけど、篠原くんを避けたりするのはやめよう。
「それじゃあ、これからは敬語もなしにしようか」
「えぇ!? そ、それはちょっと……」
「なぜ? 友達だよね?」
「友ッ!?」
わたしはただ、人間関係的に仲良くしたいと思っていただけなのに、篠原くんの友達なんて畏れ多い!
「友達じゃなかった?」
篠原くんの哀し気な表情に、わたしは慌てて両手を振った。
「と、友達です! もちろん!」
「そう。良かった」
篠原くんがふわりと柔らかく微笑むのを見て、わたしは内心信じられない気持ちでいっぱいだった。わたしなんかが、本当に篠原くんの“友達”と言っていいのだろうか。遠慮するなと言われたそばから、畏れ多くて仕方がない。やっぱり、わたしが篠原くんと対等な“友達”になるなんて無理なんじゃないだろうか。
頭の中でぐるぐる考えていると、玄関が開く音がした。篠原くんは、おじさんと暮らしていると言っていた。変な子だと思われないように、きちんとしなきゃ。
「お帰りなさい。早かったんですね」
篠原くんは、おじさんが買ってきたショッピングバッグを受け取ると、それを冷蔵庫に入れつつ声をかけた。
「ネチネチうるさいやつがいるから、逃げてきちゃった。それよりも、お友達かい?」
「はい。同じクラスの津田さんです」
篠原くんに紹介されて、わたしはまっすぐ背筋を伸ばした。
「おっ、おじゃましてます。津田成海です!」
元気よく挨拶を心がけたつもりだけど、緊張しすぎて、結局どもってしまった。それでもおじさんは、優しいにこやかな顔で笑った。
「いらっしゃい、成海ちゃん。ぼくは咲乃の叔父の雅之です。よろしくね」
慌てて訂正して、ハハハとこぼれた笑いが白々しく響く。どこまで滑稽なんだろう、わたしは。篠原くんに嫌われたくなくて、必死に取り繕っている。
「……わかってるんです。わたしは篠原くんといる資格なんかないって」
恥ずかしくて俯いて、服の裾で手汗をにぎりつつ続けた。
「わたしなんか、篠原くんと関わっていい人間じゃないって」
わたしは、篠原くんが怖かった。わたしと違って、篠原くんは完璧で、そんな篠原くんに嫌われるのはすごく怖かったから。もう、誰かに嫌われて、あんな想いをしたくない。わたしなんて、普通にしていても誰かを不快にさせてしまう。
「……ただ、わたしは……仲良く、なりたかったんです……」
ブタにしては、過分な望みだ。篠原くんに嫌われたくなかった上に、仲良くなりたいだなんて。口に出すのも恥ずかしいくらいに。
怖いぐらいの沈黙だった。息を吐くのもはばかれるくらい。篠原くんの顔も見れない。
「約束して、津田さん。俺のこと、もう怖がったりしないって」
「……へ?」
おどろいて篠原くんの顔を見る。こんな恥ずかしい姿をさらしても、篠原くんの顔は優しかった。
「俺は、津田さんが思ってるほど完璧じゃないよ。俺だって、ダメなところは沢山あるし」
篠原くんは、わたしに小指を差し出して、ふわりと柔らかく微笑んだ。
「俺も、津田さんのこと嫌ったりしないから。だから、約束」
篠原くんは、わたしのこと気持ち悪くないのだろうか。困惑して、差し出された小指と篠原くんの顔を交互に見る。篠原くんの瞳の中にさした光は、鮮やかで温かくて、とても優しい色をしていた。
「……は、はい……わかり……ました」
恐々小指を絡ませる。わたしなんかが篠原くんの指に触れるのは申し訳なくて、遠慮がちに絡めると、篠原くんの長い指がしっかりわたしの指をつかまえた。
上下に揺らして、ゆびきりげんまん。
「あらためてよろしくね、津田さん」
ふわりと笑った篠原くんの顔があまりにも眩しすぎて、わたしは思わずまばたきした。
「……は、はい。お、おねがいします」
なんだか、信じられない。こんなブスを受け入れてくれたことが。
「これでもう、畏れ多いとか言って遠慮したり、俺を遠ざけたりするのはやめてね」
「が、がんばります」
篠原くんと対等でいるなんて絶対無理だと思うけど、篠原くんを避けたりするのはやめよう。
「それじゃあ、これからは敬語もなしにしようか」
「えぇ!? そ、それはちょっと……」
「なぜ? 友達だよね?」
「友ッ!?」
わたしはただ、人間関係的に仲良くしたいと思っていただけなのに、篠原くんの友達なんて畏れ多い!
「友達じゃなかった?」
篠原くんの哀し気な表情に、わたしは慌てて両手を振った。
「と、友達です! もちろん!」
「そう。良かった」
篠原くんがふわりと柔らかく微笑むのを見て、わたしは内心信じられない気持ちでいっぱいだった。わたしなんかが、本当に篠原くんの“友達”と言っていいのだろうか。遠慮するなと言われたそばから、畏れ多くて仕方がない。やっぱり、わたしが篠原くんと対等な“友達”になるなんて無理なんじゃないだろうか。
頭の中でぐるぐる考えていると、玄関が開く音がした。篠原くんは、おじさんと暮らしていると言っていた。変な子だと思われないように、きちんとしなきゃ。
「お帰りなさい。早かったんですね」
篠原くんは、おじさんが買ってきたショッピングバッグを受け取ると、それを冷蔵庫に入れつつ声をかけた。
「ネチネチうるさいやつがいるから、逃げてきちゃった。それよりも、お友達かい?」
「はい。同じクラスの津田さんです」
篠原くんに紹介されて、わたしはまっすぐ背筋を伸ばした。
「おっ、おじゃましてます。津田成海です!」
元気よく挨拶を心がけたつもりだけど、緊張しすぎて、結局どもってしまった。それでもおじさんは、優しいにこやかな顔で笑った。
「いらっしゃい、成海ちゃん。ぼくは咲乃の叔父の雅之です。よろしくね」