いじめられ少女が腹黒優等生の一軍男子に溺愛されるまでの青春ラブストーリー【高嶺の君とキズナを紡ぐ】
ep11 ここに天国があった
篠原くんのおじさんは、30代後半くらいの長身の男性だった。すらりと背の高い180センチはありそうな長身に、目鼻立ちのはっきりした顔立ち。たれ目ぎみの、穏やかで優しそうな雰囲気があった。とてもきれいな男の人だ。儚げでクールな美しさとのある篠原くんとは違って、おじさんはなんかこう……、母性本能をくすぐられるというか、どことなく放っておけない感じがする。14歳が大人に抱く印象として適切かどうかはわからないけれど、とにかく、篠原くんとは違った魅力のある人だと思った。
おじさんは、帰ってきて早々に晩酌を始めるらしい。買ってきたばかりのお刺身とビールを、テーブルに広げている。
わたしもそろそろ帰ろうかな。もう、夕飯の時間だし。
「成海ちゃん、お刺身食べる?」
「だ、大丈夫です。もう帰りますんで!」
おじさんに言われて、わたしはぶんぶんと首を振った。おさしみはすごく美味しそうだけど。
「まぁまぁ、遠慮しないで。今日はご飯を食べていくよね?」
「え、ごはん?」
篠原くんと晩御飯を一緒にできるなんて嬉しすぎるお誘いだけど、これは社交辞令というやつで、本当は断った方がいいやつ?
「で、でも、わるいですし」
「せっかくだから、食べていきなよ。これから夕飯作るから」
篠原くんに言われて、わたしは驚いた。
「篠原くんが作るんですか?」
「うん。うちは俺が作るよ。おじさんは、料理ができないからね」
篠原くん、料理できるの!? す、すげぇ。
「え、えと、じゃあ、お言葉に甘えて……」
篠原くんの手料理なんてレアすぎるイベントを逃したら、絶対に一生後悔する。
*
篠原くんがエプロンを付けて台所に立っている姿は、それはもう最高に眼福だった。慣れた包丁使いや、手際よく作る姿が格好よくてずっと見てられる。まさか篠原くん、料理までできるとは。どこまで完璧なんだ、この人は。
篠原くんの手料理をいただけるというこの状況は、きっと全世界の女子が喉から手が出るほどうらやましいはずだ。あつかましくも篠原くんのご厚意に甘えているわたしは、いつか天罰が下るかもしれない。いや、むしろ下ったっていい。いっそのこと、篠原くんのすばらしく魅力的なところを存分に堪能してから死んでやるのだ。
「あ、あの、篠原くん。なにかお手伝いしましょうか?」
とはいっても、篠原くん一人に働かせておいてふてぶてしく待っているだけなのも気が引ける。料理なんて一度もしたことないけど、やさいの皮むきくらいなら出来ると思うし。
なにか手伝えることがないかと篠原くんの後ろをちょろちょろしていると、「津田さんは向こうでゆっくりしていてね」とやんわり追い出されてしまった。ふがいない限りである。
「成海ちゃんは、生魚大丈夫? 何か好きなものはあるかな?」
「え、えーと……イカとサーモンが好きです」
「じゃあ、イカとサーモンは成海ちゃんにあげるね。ブリは好き?」
「好きです。あ、でも、もう大丈夫です」
「いいよ、いいよ。成海ちゃん食べなよ」
「じゃ、じゃあ、少しだけ……」
おじさんがにこにこしながら取り分けてくれる。めちゃくちゃいい人。
しばらくして、出来上がった料理が運ばれてきた。玄米ごはんとお味噌汁、牛肉とピーマンの炒め物に、きんぴらごぼうが小皿に分けられて出てくる。すごすぎて、語彙力足りないけど、すごく身体によさそうな家庭料理だ。
「どうぞ、津田さん。遠慮せずに食べてね」
「いただきます」
早速、牛肉とピーマンの炒め物を食べてみた。こりこりする野菜の触感、甘ダレとじゅわっとひろがる肉汁がピーマンの苦味と絡み合う。そこにご飯をかきこんで……。
「うんまぁあ――!!」
おじさんは、帰ってきて早々に晩酌を始めるらしい。買ってきたばかりのお刺身とビールを、テーブルに広げている。
わたしもそろそろ帰ろうかな。もう、夕飯の時間だし。
「成海ちゃん、お刺身食べる?」
「だ、大丈夫です。もう帰りますんで!」
おじさんに言われて、わたしはぶんぶんと首を振った。おさしみはすごく美味しそうだけど。
「まぁまぁ、遠慮しないで。今日はご飯を食べていくよね?」
「え、ごはん?」
篠原くんと晩御飯を一緒にできるなんて嬉しすぎるお誘いだけど、これは社交辞令というやつで、本当は断った方がいいやつ?
「で、でも、わるいですし」
「せっかくだから、食べていきなよ。これから夕飯作るから」
篠原くんに言われて、わたしは驚いた。
「篠原くんが作るんですか?」
「うん。うちは俺が作るよ。おじさんは、料理ができないからね」
篠原くん、料理できるの!? す、すげぇ。
「え、えと、じゃあ、お言葉に甘えて……」
篠原くんの手料理なんてレアすぎるイベントを逃したら、絶対に一生後悔する。
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篠原くんがエプロンを付けて台所に立っている姿は、それはもう最高に眼福だった。慣れた包丁使いや、手際よく作る姿が格好よくてずっと見てられる。まさか篠原くん、料理までできるとは。どこまで完璧なんだ、この人は。
篠原くんの手料理をいただけるというこの状況は、きっと全世界の女子が喉から手が出るほどうらやましいはずだ。あつかましくも篠原くんのご厚意に甘えているわたしは、いつか天罰が下るかもしれない。いや、むしろ下ったっていい。いっそのこと、篠原くんのすばらしく魅力的なところを存分に堪能してから死んでやるのだ。
「あ、あの、篠原くん。なにかお手伝いしましょうか?」
とはいっても、篠原くん一人に働かせておいてふてぶてしく待っているだけなのも気が引ける。料理なんて一度もしたことないけど、やさいの皮むきくらいなら出来ると思うし。
なにか手伝えることがないかと篠原くんの後ろをちょろちょろしていると、「津田さんは向こうでゆっくりしていてね」とやんわり追い出されてしまった。ふがいない限りである。
「成海ちゃんは、生魚大丈夫? 何か好きなものはあるかな?」
「え、えーと……イカとサーモンが好きです」
「じゃあ、イカとサーモンは成海ちゃんにあげるね。ブリは好き?」
「好きです。あ、でも、もう大丈夫です」
「いいよ、いいよ。成海ちゃん食べなよ」
「じゃ、じゃあ、少しだけ……」
おじさんがにこにこしながら取り分けてくれる。めちゃくちゃいい人。
しばらくして、出来上がった料理が運ばれてきた。玄米ごはんとお味噌汁、牛肉とピーマンの炒め物に、きんぴらごぼうが小皿に分けられて出てくる。すごすぎて、語彙力足りないけど、すごく身体によさそうな家庭料理だ。
「どうぞ、津田さん。遠慮せずに食べてね」
「いただきます」
早速、牛肉とピーマンの炒め物を食べてみた。こりこりする野菜の触感、甘ダレとじゅわっとひろがる肉汁がピーマンの苦味と絡み合う。そこにご飯をかきこんで……。
「うんまぁあ――!!」