いじめられ少女が腹黒優等生の一軍男子に溺愛されるまでの青春ラブストーリー【高嶺の君とキズナを紡ぐ】
「お口に合ったようで良かった」
まさか、篠原くんの手料理がこんなに美味しいなんて。篠原くんが完璧すぎてこわい。
わたしの勉強を見た後は、家に帰る時にはもう外も暗くなっちゃってるし、その後に買い物もして、ご飯を作ってるとなると、篠原くんの負担が大きすぎるんじゃないのかな。なんだか、申し訳ない。
「あの、篠原くん。わたしの勉強をみるの、大変じゃないですか?」
「そんなことないよ。たまにおばさんがおかずを分けてくれるから、すごく助かってるし」
「そうだったんですか!?」
知らなかった。しのはらくんとお母さんで、そんなやりとりしてたんだ。
「成海ちゃん家のごはん、とっても美味しいよ。いつもありがとうね」
おじさんが、ほんわか笑って言った。
「お口に合えば何よりです」
よかった。篠原くんの負担が減ってるなら、お母さんも喜ぶだろう。
「おじさんは、何のお仕事をしているんですか?」
「腕時計のデザインをしたり、作ったりしているよ」
「デザイナーさんですか?」
「どちらかと言えば、職人かな。あとで見せてあげるね」
篠原くんのおじさん、やさしくていい人だな。気負わせない雰囲気があるっていうか、全体的にほのぼのしてる。
「津田さん、料理は口に合う?」
篠原くんにきかれて、わたしは力強くうなずいた。
「はい、めちゃくちゃ美味しいです」
「そう、良かった」
美味しい料理を食べられて、篠原くんの笑顔も見られて今日はとっても幸せだ。
「そうだ咲乃、全教科満点おめでとう。せっかくだから、何かお祝いを用意しようか」
叔父さんが思い出したように、篠原くんに言った。
全教科満点!? そういえば、篠原くんのテスト結果まだ聞いてなかったけど、篠原くんすごいな!
「お祝いなんて大丈夫です」
「そう? たまにはいいじゃない。ねぇ、成海ちゃん」
口にたくさん食べ物をつめこんでて話せないので、全力でうなづく。篠原くんはがんばっているんだから、たまにはわがままになっても良いと思う。
「それよりも叔父さん、さっき逃げてきたって言ってましたよね。何があったんですか?」
「そんなこと言ったかなぁ」
「言いました。とぼけないでください」
「だってあいつ仕事に関係がない文句が多いんだもん。たった3分遅刻したくらいで文句言うし、たまには運動でもしろとかさぁ!」
「3分でも遅刻は、遅刻ですよ叔父さん」
「咲乃までそんなこと言う!?」
大の大人がごねているのを、篠原くんは苦笑しながら聞いている。これでは大人と子供が逆だ。……何だろう、胸のあたりがきゅっとする。30代の独り身男性を甲斐甲斐しく世話を焼く女子力高めの男子中学生が目の前に。
これ、現実? 死ぬ前に見る幻かなんかじゃないの? もしかして、わたし死んでる? 実は自分が気づいてないだけで死んでた? 死ぬ間際に夢見てる? すごく尊いんだが。
「津田さん、顔がにやけてるけど……?」
何かを察したらしい篠原くんが、わたしに笑顔を向けた。
「い、いや……仲が良くて素敵だなと」
「変なこと考えていないよね?」
失礼だな。美しい情景を尊ぶ、これはまっとうな芸術や文化を愛でる崇高なる精神です!
すっかりお腹が膨れて、食後は緑茶を飲みつつまったり過ごした。おじさんが作っているという腕時計も見せてもらった。見せてもらった腕時計は、オフホワイトの盤面に時分を示す印の部分はシルバーになっていて、上品で美しい時計だった。
チッチッチッと細かく時を刻む音が、小動物の鼓動に似ていて、なんだか不思議な愛おしさを感じる。
「機械式時計っていうんだよ。電池じゃなくて、ぜんまいで動くんだ」
「へぇー!」
まさか、篠原くんの手料理がこんなに美味しいなんて。篠原くんが完璧すぎてこわい。
わたしの勉強を見た後は、家に帰る時にはもう外も暗くなっちゃってるし、その後に買い物もして、ご飯を作ってるとなると、篠原くんの負担が大きすぎるんじゃないのかな。なんだか、申し訳ない。
「あの、篠原くん。わたしの勉強をみるの、大変じゃないですか?」
「そんなことないよ。たまにおばさんがおかずを分けてくれるから、すごく助かってるし」
「そうだったんですか!?」
知らなかった。しのはらくんとお母さんで、そんなやりとりしてたんだ。
「成海ちゃん家のごはん、とっても美味しいよ。いつもありがとうね」
おじさんが、ほんわか笑って言った。
「お口に合えば何よりです」
よかった。篠原くんの負担が減ってるなら、お母さんも喜ぶだろう。
「おじさんは、何のお仕事をしているんですか?」
「腕時計のデザインをしたり、作ったりしているよ」
「デザイナーさんですか?」
「どちらかと言えば、職人かな。あとで見せてあげるね」
篠原くんのおじさん、やさしくていい人だな。気負わせない雰囲気があるっていうか、全体的にほのぼのしてる。
「津田さん、料理は口に合う?」
篠原くんにきかれて、わたしは力強くうなずいた。
「はい、めちゃくちゃ美味しいです」
「そう、良かった」
美味しい料理を食べられて、篠原くんの笑顔も見られて今日はとっても幸せだ。
「そうだ咲乃、全教科満点おめでとう。せっかくだから、何かお祝いを用意しようか」
叔父さんが思い出したように、篠原くんに言った。
全教科満点!? そういえば、篠原くんのテスト結果まだ聞いてなかったけど、篠原くんすごいな!
「お祝いなんて大丈夫です」
「そう? たまにはいいじゃない。ねぇ、成海ちゃん」
口にたくさん食べ物をつめこんでて話せないので、全力でうなづく。篠原くんはがんばっているんだから、たまにはわがままになっても良いと思う。
「それよりも叔父さん、さっき逃げてきたって言ってましたよね。何があったんですか?」
「そんなこと言ったかなぁ」
「言いました。とぼけないでください」
「だってあいつ仕事に関係がない文句が多いんだもん。たった3分遅刻したくらいで文句言うし、たまには運動でもしろとかさぁ!」
「3分でも遅刻は、遅刻ですよ叔父さん」
「咲乃までそんなこと言う!?」
大の大人がごねているのを、篠原くんは苦笑しながら聞いている。これでは大人と子供が逆だ。……何だろう、胸のあたりがきゅっとする。30代の独り身男性を甲斐甲斐しく世話を焼く女子力高めの男子中学生が目の前に。
これ、現実? 死ぬ前に見る幻かなんかじゃないの? もしかして、わたし死んでる? 実は自分が気づいてないだけで死んでた? 死ぬ間際に夢見てる? すごく尊いんだが。
「津田さん、顔がにやけてるけど……?」
何かを察したらしい篠原くんが、わたしに笑顔を向けた。
「い、いや……仲が良くて素敵だなと」
「変なこと考えていないよね?」
失礼だな。美しい情景を尊ぶ、これはまっとうな芸術や文化を愛でる崇高なる精神です!
すっかりお腹が膨れて、食後は緑茶を飲みつつまったり過ごした。おじさんが作っているという腕時計も見せてもらった。見せてもらった腕時計は、オフホワイトの盤面に時分を示す印の部分はシルバーになっていて、上品で美しい時計だった。
チッチッチッと細かく時を刻む音が、小動物の鼓動に似ていて、なんだか不思議な愛おしさを感じる。
「機械式時計っていうんだよ。電池じゃなくて、ぜんまいで動くんだ」
「へぇー!」