いじめられ少女が腹黒優等生の一軍男子に溺愛されるまでの青春ラブストーリー【高嶺の君とキズナを紡ぐ】
おじさんが作っているのは、着けているだけで勝手にネジが巻き上がる“自動巻き“というものらしい。毎日ネジを巻かなくても良いなんて、すごいなぁ。
「おじさんの時計、1個一千万くらいするんだよ」
「いっせ……っ!?」
信じられない金額に、思わず叫びそうになった。そんな高級品を、篠原くんのおじさんが作ってるなんて信じられない。
「す……、すごい職人さんなんですね。おじさんって」
「いやぁ、それほどでも」
わたしが尊敬を込めて言うと、おじさんは照れた様子で頭の後ろをかいた。
そうこうしているうちに、時間は8時をとっくに過ぎていた。ちょっとお邪魔し過ぎちゃったな。もう帰らないと。
「あの、わたしそろそろ帰ります」
「そっか。じゃあ、ぼくが送るよ」
「すみません、お願いします」
わたしが帰ることを伝えると、おじさんが家まで送ってくれることになった。もう空も真っ暗だし、帰り道は人通りが少なくなるから、送ってもらえるのはすごく助かる。
「津田さん、気を付けてね」
帰り支度をすませて玄関へ向かうと、篠原くんが見送りに来てくれた。
「ありがとうございます。今日はごちそうさまでした」
篠原くんの家にお招きされて、手作り料理まで食べちゃって、本当に素敵なご褒美だったな。こんなご褒美がもらえるなら、これからも勉強も頑張ろうと思えてしまう。篠原くんは、飴と鞭の使い分けが上手い。
「いつでも遊びにおいでよ。咲乃が料理を作ってくれるからさ」
「たまには叔父さんも作ってみたらどうですか?」
「ぼくが作るより、きみが作ってくれた方が美味しいよ」
わたしの前でいちゃついてんじゃねぇよ、ホントにありがとうございます!
「津田さん、また顔がにやけてるよ」
篠原くんの笑顔が固い! わたしはすぐさま表情筋に力を入れた。
*
わたしは今、洗面所前で正座待機中だ。お姉ちゃんがお風呂に入っていると、お母さんから教えてもらったのだ。今まで散々バカにしてきたお姉ちゃんに、今回のテスト結果を報告してぎゃふんと言わせてみせるのだ。
洗面所の扉が開いた。頭にタオルを巻いて部屋着を着たお姉ちゃんが、鬱陶しそうにわたしを見下ろしている。
「何やってんのよ、あんた」
メイクを落としたお姉ちゃんの目は細くて、極悪人かと思うほどに目つきが悪い。肌はきれいだけど、すっぴんは目つきの悪い肌色のおかめさんみたいだ。普段、美人だといわれるお姉ちゃんも、所詮はメイクのおかげ。津田家の遺伝子など、こんなものだ。
「本日は、ご報告したいことがありまして」
「めずらしくテストで良い点とったんでしょ? もうお母さんから聞いてるわ」
なんだよ、お母さんのおしゃべり。せっかく驚かせてやろうと思ったのに。お姉ちゃんがぎゃふんと言うそぶりはなくて、わたしはがっかりした。
「っていうか、テスト前に勉強するなんて普通でしょ。今更、自慢することじゃないわ」
うぐぐ……。
「そうだけどさ。はじめていい点とったんだから、褒めてくれたっていいじゃん。めちゃくちゃ頑張りましたよ、わたし!」
「たった一回のテストが良かったからって調子乗ってんじゃないわよ。高得点を取ったって、学んだことが活かせなきゃ意味ないでしょ」
「……」
すごい。ぐうの音も出ないや。
「どきなさい」と軽くあしらわれ、お姉ちゃんは正座しているわたしの横を過ぎて行った。
「……ぐやじいよ゛ぉ゛」
わたしはずびっと鼻水をすすった。
「おじさんの時計、1個一千万くらいするんだよ」
「いっせ……っ!?」
信じられない金額に、思わず叫びそうになった。そんな高級品を、篠原くんのおじさんが作ってるなんて信じられない。
「す……、すごい職人さんなんですね。おじさんって」
「いやぁ、それほどでも」
わたしが尊敬を込めて言うと、おじさんは照れた様子で頭の後ろをかいた。
そうこうしているうちに、時間は8時をとっくに過ぎていた。ちょっとお邪魔し過ぎちゃったな。もう帰らないと。
「あの、わたしそろそろ帰ります」
「そっか。じゃあ、ぼくが送るよ」
「すみません、お願いします」
わたしが帰ることを伝えると、おじさんが家まで送ってくれることになった。もう空も真っ暗だし、帰り道は人通りが少なくなるから、送ってもらえるのはすごく助かる。
「津田さん、気を付けてね」
帰り支度をすませて玄関へ向かうと、篠原くんが見送りに来てくれた。
「ありがとうございます。今日はごちそうさまでした」
篠原くんの家にお招きされて、手作り料理まで食べちゃって、本当に素敵なご褒美だったな。こんなご褒美がもらえるなら、これからも勉強も頑張ろうと思えてしまう。篠原くんは、飴と鞭の使い分けが上手い。
「いつでも遊びにおいでよ。咲乃が料理を作ってくれるからさ」
「たまには叔父さんも作ってみたらどうですか?」
「ぼくが作るより、きみが作ってくれた方が美味しいよ」
わたしの前でいちゃついてんじゃねぇよ、ホントにありがとうございます!
「津田さん、また顔がにやけてるよ」
篠原くんの笑顔が固い! わたしはすぐさま表情筋に力を入れた。
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わたしは今、洗面所前で正座待機中だ。お姉ちゃんがお風呂に入っていると、お母さんから教えてもらったのだ。今まで散々バカにしてきたお姉ちゃんに、今回のテスト結果を報告してぎゃふんと言わせてみせるのだ。
洗面所の扉が開いた。頭にタオルを巻いて部屋着を着たお姉ちゃんが、鬱陶しそうにわたしを見下ろしている。
「何やってんのよ、あんた」
メイクを落としたお姉ちゃんの目は細くて、極悪人かと思うほどに目つきが悪い。肌はきれいだけど、すっぴんは目つきの悪い肌色のおかめさんみたいだ。普段、美人だといわれるお姉ちゃんも、所詮はメイクのおかげ。津田家の遺伝子など、こんなものだ。
「本日は、ご報告したいことがありまして」
「めずらしくテストで良い点とったんでしょ? もうお母さんから聞いてるわ」
なんだよ、お母さんのおしゃべり。せっかく驚かせてやろうと思ったのに。お姉ちゃんがぎゃふんと言うそぶりはなくて、わたしはがっかりした。
「っていうか、テスト前に勉強するなんて普通でしょ。今更、自慢することじゃないわ」
うぐぐ……。
「そうだけどさ。はじめていい点とったんだから、褒めてくれたっていいじゃん。めちゃくちゃ頑張りましたよ、わたし!」
「たった一回のテストが良かったからって調子乗ってんじゃないわよ。高得点を取ったって、学んだことが活かせなきゃ意味ないでしょ」
「……」
すごい。ぐうの音も出ないや。
「どきなさい」と軽くあしらわれ、お姉ちゃんは正座しているわたしの横を過ぎて行った。
「……ぐやじいよ゛ぉ゛」
わたしはずびっと鼻水をすすった。