いじめられ少女が腹黒優等生の一軍男子に溺愛されるまでの青春ラブストーリー【高嶺の君とキズナを紡ぐ】
「すっごく助かっちゃった。篠原くん、ありがとう!」
稚奈は機嫌よくスキップしながら咲乃にお礼を言った。稚奈の周りに、見えないはずの花びらがふよふよ飛んでいる。
「帰ったらきちんと最後まで書き上げてね。出来上がりを楽しみにしてるから」
咲乃はにこりと笑うと、浮かれている稚奈にしっかりと釘を刺した。
「えっ、出来上がったレポート、篠原くんに見せなきゃいけないの!?」
「ここまで付き合わされたんだから当然でしょう?」
「えー、なにそれー、めちゃくちゃ厳しい!」
咲乃が笑顔を絶やさずに言うと、稚奈の顔が青ざめた。先程までの上機嫌が吹き飛んで、しゅんとうなだれてしまう。
「篠原くんって、もっと優しい人だと思ってた。引き留めないと帰っちゃうところだったし」
「課題を後回しにしていたことを棚に上げないで。手伝ってあげたんだから、それなりの成果を見せてもらわないと」
「いじわるー」
稚奈は頬を膨らませた。女子の憧れである咲乃が、こんなにも意地悪だとは思わなかったのだ。
大方の女子が抱く咲乃に対するイメージは、いつも穏やかにほほ笑みを浮かべて、全てを包み込んでくれる優しい王子様のような存在だった。だが、実際の咲乃はそんなに優しくはない。相手に対して無難に接しているだけで、柔らかく見えるのは外面だけ。親しくない人間との線引きはしっかりしている。
「なるちゃんのことも、こうやっていじめてるの?」
「今まで休んでいた分を取り戻しているだけで、いじめているつもりはないんだけど」
「うそ、絶対いじめてるもん! なるちゃん可哀想!」
咲乃が朗らかに答えると、稚奈が叫んだ。
あれこれ話しながら、咲乃はひっそりと横目で稚奈を観察した。
咲乃の印象では、稚奈は明るくて活発な性格をした、可愛いものとお洒落な物が好きな少女らしい子だ。誰に対しても隔たりがないため、誰からも好印象を与え、同性異性関係なく友人も多い。お喋り好きらしくかなりの情報通で、学校の取り留めない話からうわさ話まで色々喋ってくれる。そんな彼女なら、女子の間での流行り事にも敏いはずだと思った。
「毛糸を指輪みたいに巻くのって流行ってる?」
「毛糸を指輪みたいに?」
稚奈がぽかんと口を開けて咲乃を見返した。
今朝、中本結子と話した時、ふと彼女の左手の小指に目がいった。以前、結子を助け起こした時に見た、白く細い指に巻かれた赤い毛糸が咲乃の記憶の片隅にやけに鮮明に残っていたのだ。
「別に流行って無いけど……。あっ、でも、おまじないでそんなのがあった気がする」
「おまじない?」
「そうそう、恋のおまじない。運命の人とは赤い糸で繋がってるって言うじゃん。小指に赤い糸を括り付けて、3日間好きな人のことを思い浮かべてお願いするの。3日後にその恋が成就するんだって。小学生の頃、おまじないの本で載っていて、いろいろみんなで試したなー」
咲乃は、結子に小指の毛糸の意味を聞かなくてよかったと思った。結子としては、隠しておきたいものだったはずだ。ましてや意中の相手に知られたくは無いだろう。結果的には、その本人に意味を知られることとなってしまったのだが。
「えー、なになに。篠原くん、恋のおまじないに興味あるの!?」
稚奈は恋バナには目がないと言うように、興味津々に目を輝かせた。
「ううん。別に」
咲乃は穏やかに笑った。
「なぜ、そんなものに縋っているんだろうって」
稚奈は機嫌よくスキップしながら咲乃にお礼を言った。稚奈の周りに、見えないはずの花びらがふよふよ飛んでいる。
「帰ったらきちんと最後まで書き上げてね。出来上がりを楽しみにしてるから」
咲乃はにこりと笑うと、浮かれている稚奈にしっかりと釘を刺した。
「えっ、出来上がったレポート、篠原くんに見せなきゃいけないの!?」
「ここまで付き合わされたんだから当然でしょう?」
「えー、なにそれー、めちゃくちゃ厳しい!」
咲乃が笑顔を絶やさずに言うと、稚奈の顔が青ざめた。先程までの上機嫌が吹き飛んで、しゅんとうなだれてしまう。
「篠原くんって、もっと優しい人だと思ってた。引き留めないと帰っちゃうところだったし」
「課題を後回しにしていたことを棚に上げないで。手伝ってあげたんだから、それなりの成果を見せてもらわないと」
「いじわるー」
稚奈は頬を膨らませた。女子の憧れである咲乃が、こんなにも意地悪だとは思わなかったのだ。
大方の女子が抱く咲乃に対するイメージは、いつも穏やかにほほ笑みを浮かべて、全てを包み込んでくれる優しい王子様のような存在だった。だが、実際の咲乃はそんなに優しくはない。相手に対して無難に接しているだけで、柔らかく見えるのは外面だけ。親しくない人間との線引きはしっかりしている。
「なるちゃんのことも、こうやっていじめてるの?」
「今まで休んでいた分を取り戻しているだけで、いじめているつもりはないんだけど」
「うそ、絶対いじめてるもん! なるちゃん可哀想!」
咲乃が朗らかに答えると、稚奈が叫んだ。
あれこれ話しながら、咲乃はひっそりと横目で稚奈を観察した。
咲乃の印象では、稚奈は明るくて活発な性格をした、可愛いものとお洒落な物が好きな少女らしい子だ。誰に対しても隔たりがないため、誰からも好印象を与え、同性異性関係なく友人も多い。お喋り好きらしくかなりの情報通で、学校の取り留めない話からうわさ話まで色々喋ってくれる。そんな彼女なら、女子の間での流行り事にも敏いはずだと思った。
「毛糸を指輪みたいに巻くのって流行ってる?」
「毛糸を指輪みたいに?」
稚奈がぽかんと口を開けて咲乃を見返した。
今朝、中本結子と話した時、ふと彼女の左手の小指に目がいった。以前、結子を助け起こした時に見た、白く細い指に巻かれた赤い毛糸が咲乃の記憶の片隅にやけに鮮明に残っていたのだ。
「別に流行って無いけど……。あっ、でも、おまじないでそんなのがあった気がする」
「おまじない?」
「そうそう、恋のおまじない。運命の人とは赤い糸で繋がってるって言うじゃん。小指に赤い糸を括り付けて、3日間好きな人のことを思い浮かべてお願いするの。3日後にその恋が成就するんだって。小学生の頃、おまじないの本で載っていて、いろいろみんなで試したなー」
咲乃は、結子に小指の毛糸の意味を聞かなくてよかったと思った。結子としては、隠しておきたいものだったはずだ。ましてや意中の相手に知られたくは無いだろう。結果的には、その本人に意味を知られることとなってしまったのだが。
「えー、なになに。篠原くん、恋のおまじないに興味あるの!?」
稚奈は恋バナには目がないと言うように、興味津々に目を輝かせた。
「ううん。別に」
咲乃は穏やかに笑った。
「なぜ、そんなものに縋っているんだろうって」