いじめられ少女が腹黒優等生の一軍男子に溺愛されるまでの青春ラブストーリー【高嶺の君とキズナを紡ぐ】
「それ、俺にも作ってくれない?」
「え?」
結子が思わず聞き返すと、咲乃は手元のスプーンを回しながら、伺うように笑った。
「俺、甘い物好きなんだ。中本さんが作るお菓子、食べてみたいな」
「っで、でも、篠原くんの口には合わないかも!」
気が弱い結子には、好きな人に自分の手作りを食べさせるなんてとても出来ることではない。必死に卑下すると、咲乃は首をかしげて緩く笑った。
「そう? 中本さんがどんなお菓子作るのか、すごく興味があるけど」
結子の熱を帯びた瞳が潤んで僅かに揺れた。心臓の鼓動が、耳の方まで伝わってくる。
咲乃はテーブルに肘をつくと、結子の瞳の中を覗き込んだ。
「作ってくれる? 俺のために」
結子は顔を真っ赤にして、小さく頷いた。それが結子に出来る、精一杯の返事だった。
家庭科の先生の号令でみんなが自分の席に戻って行く中、結子は熱くなった顔を両手で包んで冷やした。まさか、咲乃にお菓子をつくる約束をしてしまうなんて。下手なものは絶対に渡せない。
焦る気持ちと、嬉しい気持ちが混同して、どう処理すればいいのか分からない。咲乃と話せただけでも嬉しいのに。
ふわふわした気持ちで、咲乃のことを考えていると、山口彩美と目が合ってしまった。
咄嗟に目を逸らす。先程まで夢見心地だった思いが一気に冷え切った。心臓が激しく脈打っている。咲乃の時とは違う、苦しいほどの激しい動悸。見られていたのだ。山口彩美に。
彩美の鋭い視線を感じて、結子は冷や汗を掻きながら、消え入るように下を向いた。
「え?」
結子が思わず聞き返すと、咲乃は手元のスプーンを回しながら、伺うように笑った。
「俺、甘い物好きなんだ。中本さんが作るお菓子、食べてみたいな」
「っで、でも、篠原くんの口には合わないかも!」
気が弱い結子には、好きな人に自分の手作りを食べさせるなんてとても出来ることではない。必死に卑下すると、咲乃は首をかしげて緩く笑った。
「そう? 中本さんがどんなお菓子作るのか、すごく興味があるけど」
結子の熱を帯びた瞳が潤んで僅かに揺れた。心臓の鼓動が、耳の方まで伝わってくる。
咲乃はテーブルに肘をつくと、結子の瞳の中を覗き込んだ。
「作ってくれる? 俺のために」
結子は顔を真っ赤にして、小さく頷いた。それが結子に出来る、精一杯の返事だった。
家庭科の先生の号令でみんなが自分の席に戻って行く中、結子は熱くなった顔を両手で包んで冷やした。まさか、咲乃にお菓子をつくる約束をしてしまうなんて。下手なものは絶対に渡せない。
焦る気持ちと、嬉しい気持ちが混同して、どう処理すればいいのか分からない。咲乃と話せただけでも嬉しいのに。
ふわふわした気持ちで、咲乃のことを考えていると、山口彩美と目が合ってしまった。
咄嗟に目を逸らす。先程まで夢見心地だった思いが一気に冷え切った。心臓が激しく脈打っている。咲乃の時とは違う、苦しいほどの激しい動悸。見られていたのだ。山口彩美に。
彩美の鋭い視線を感じて、結子は冷や汗を掻きながら、消え入るように下を向いた。