いじめられ少女が腹黒優等生の一軍男子に溺愛されるまでの青春ラブストーリー【高嶺の君とキズナを紡ぐ】
ボールが東中学に渡ると、英至中学のパワーのある選手が奪い返す。
咲乃はボールを受け取ると、そのまま流れるように投げた。ボールは、大きな放物線を描く。リングに吸い込まれるように、ゴールポストに入った。
キャッチアンドシュートからのスリーポイントシュートが決まり、客席から黄色い声が上がる。今日の観客は女子が多い。普段の練習試合ならば、ここまで観客はないのだが、篠原咲乃が試合に参加するという話を聞きつけて応援に来たのだ。
部長が東中からボールを奪い、ゴールポストへ向けてシュートする。しかし、東中のガードの手によって跳ね返ったボールは、反対側へ飛んでいく。神谷と東中の選手の手が同時に伸びる。掴むようにして神谷が取ると、前から来る東中のディフェンスを軽々とかわし、隙を縫って英至中の選手へパスを回した。
英至中のパスが続く。その先は咲乃へ――が、阻むようにして東中に奪われた。東中の伸びるようなボールパスが続き、背の高い選手が、ボールを流し入れるようにゴール。東中の観客席から歓声が沸き起こった。
タイムは残り3分。スローインから再び、ゲームが再開される。東中のボールパスを、咲乃が奪う。前に立ちふさがるディフェンスにフェイントをかけて抜ける。シュート。ガゴンと音がして、ボールがゴールリングの淵をなぞるように入った。
タイムアップ、ホイッスルの盛大な音が鳴り響く。
最終試合。ここまでトータル43対43の同点で来ている。2分間の休憩中、水分補給する咲乃に神谷は近づき、耳打ちするように言った。
「篠原。正直おまえは、一番のシューターだ。東中も、おまえのガードをより強めてくる。面倒な奴につけられたら、どこでもいいから投げろ。パスを渡そうなんて考えなくていい」
咲乃が静かにうなずくと、神谷は咲乃の背中を軽くたたいて離れた。
開戦を告げるホイッスルが鳴る。栄至中がジャンプボールを取る。そのままドライブしてボールをゴールポストまで運ぶ。
部長にパス。部長がゴールへシュート。しかし、惜しくもボールはバックボードに跳ね返ると、東中がそのボールを取った。
東中のパスが続く。英至中のゴールポストへ向かうボールを、咲乃が奪い返した。
咲乃は自陣のゴールポストから離れると、仲間の位置を目測で確認する。しかし、パスを渡そうにも、先程から東中の選手にぴったりマークされていて隙がない。咲乃が動くと、相手選手が投げにくい位置に移動する。動きは完全に読まれている。
無理にでも仲間にパスを渡すべきか。いや、東中に取られる確率の方が高い。移動すればするだけ、時間のロスになる。しかしここからでは、シュートを打てる距離でもない。
「篠原!」
神谷の方を見ると、僅かに笑ったのを見た。
――パスを渡そうなんて考えなくていい。
咲乃は高くボールを投げた。ボールはディフェンスの頭上を飛び越える。その先に味方の選手はいない。方向は頭になかった。
予期せぬ方へ投げられたボールに、東側の反応が遅れた。ボールは無防備にもサイドラインに向かって飛んでいく。線を超えればアウトとなり、東中のボールだ。英至中の選手がボールを追いかける。すべての動きがスローモーションに切り替わる。あと少し、ラインを抜ける。ラインを抜ける。
その時、神谷がギリギリでボール取った。
けたたましく上がる歓声。咲乃がボールを投げる時、誰よりも神谷は先に動いていた。咲乃がボールを放る方向を見極めて回り込むと、サイドラインを出るギリギリでボールを取ったのだ。
神谷はドライブしてボールを運びながら、素早く仲間にパスを回した。繋いだパスの先は部長へ。部長は、ボールをキャッチすると高く跳躍し、バスケットゴールへ叩き入れるようにシュートした。盛大な歓声とともに、ホイッスルが鳴り響いた。
その後、4試合を終え、62対61という得点差で栄至中学校の勝利に終わった。
喜びに沸く歓声に包まれながら、咲乃は揉みくちゃにされた。チームから荒い祝福を受ける中、神谷が咲乃に近づいた。
「ありがとう、神谷。おまえのおかげで助かったよ」
咲乃は自分が投げたボールは、神谷が必ず取るはずだとわかっていた。神谷はそれを確実にやってのけたのだ。普段は信用したくない相手だが、やる時はやってくれる。
「やっぱ、おまえを頼って正解だったわ。これを機に、バスケ部入ろーぜ」
神谷から軽くパスされたボールを、咲乃がキャッチする。咲乃は、爽やかに笑った。
「絶対にやだ」
*
試合が終わると、咲乃は急いで制服に着替えた。
バスケの練習で、津田成海の家へ行く機会を失って3週間が経つ。ただでさえ全く信用されていないのに、これでは余計に不信感を持たれてしまう。
これから打ち上げだという部員達の誘いを断って、咲乃は昇降口を出た。外では予報になかった雨が勢いよく降っている。こんな時についてない。
咲乃はカバンを頭上に掲げると、雨の中を飛び出した。
*★*―――――*★*―――――*★*―――――
【神谷 亮】
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【キャラクタープロフィール一覧】
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【Alanhart|THE MAGICAL ACTORS】
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咲乃はボールを受け取ると、そのまま流れるように投げた。ボールは、大きな放物線を描く。リングに吸い込まれるように、ゴールポストに入った。
キャッチアンドシュートからのスリーポイントシュートが決まり、客席から黄色い声が上がる。今日の観客は女子が多い。普段の練習試合ならば、ここまで観客はないのだが、篠原咲乃が試合に参加するという話を聞きつけて応援に来たのだ。
部長が東中からボールを奪い、ゴールポストへ向けてシュートする。しかし、東中のガードの手によって跳ね返ったボールは、反対側へ飛んでいく。神谷と東中の選手の手が同時に伸びる。掴むようにして神谷が取ると、前から来る東中のディフェンスを軽々とかわし、隙を縫って英至中の選手へパスを回した。
英至中のパスが続く。その先は咲乃へ――が、阻むようにして東中に奪われた。東中の伸びるようなボールパスが続き、背の高い選手が、ボールを流し入れるようにゴール。東中の観客席から歓声が沸き起こった。
タイムは残り3分。スローインから再び、ゲームが再開される。東中のボールパスを、咲乃が奪う。前に立ちふさがるディフェンスにフェイントをかけて抜ける。シュート。ガゴンと音がして、ボールがゴールリングの淵をなぞるように入った。
タイムアップ、ホイッスルの盛大な音が鳴り響く。
最終試合。ここまでトータル43対43の同点で来ている。2分間の休憩中、水分補給する咲乃に神谷は近づき、耳打ちするように言った。
「篠原。正直おまえは、一番のシューターだ。東中も、おまえのガードをより強めてくる。面倒な奴につけられたら、どこでもいいから投げろ。パスを渡そうなんて考えなくていい」
咲乃が静かにうなずくと、神谷は咲乃の背中を軽くたたいて離れた。
開戦を告げるホイッスルが鳴る。栄至中がジャンプボールを取る。そのままドライブしてボールをゴールポストまで運ぶ。
部長にパス。部長がゴールへシュート。しかし、惜しくもボールはバックボードに跳ね返ると、東中がそのボールを取った。
東中のパスが続く。英至中のゴールポストへ向かうボールを、咲乃が奪い返した。
咲乃は自陣のゴールポストから離れると、仲間の位置を目測で確認する。しかし、パスを渡そうにも、先程から東中の選手にぴったりマークされていて隙がない。咲乃が動くと、相手選手が投げにくい位置に移動する。動きは完全に読まれている。
無理にでも仲間にパスを渡すべきか。いや、東中に取られる確率の方が高い。移動すればするだけ、時間のロスになる。しかしここからでは、シュートを打てる距離でもない。
「篠原!」
神谷の方を見ると、僅かに笑ったのを見た。
――パスを渡そうなんて考えなくていい。
咲乃は高くボールを投げた。ボールはディフェンスの頭上を飛び越える。その先に味方の選手はいない。方向は頭になかった。
予期せぬ方へ投げられたボールに、東側の反応が遅れた。ボールは無防備にもサイドラインに向かって飛んでいく。線を超えればアウトとなり、東中のボールだ。英至中の選手がボールを追いかける。すべての動きがスローモーションに切り替わる。あと少し、ラインを抜ける。ラインを抜ける。
その時、神谷がギリギリでボール取った。
けたたましく上がる歓声。咲乃がボールを投げる時、誰よりも神谷は先に動いていた。咲乃がボールを放る方向を見極めて回り込むと、サイドラインを出るギリギリでボールを取ったのだ。
神谷はドライブしてボールを運びながら、素早く仲間にパスを回した。繋いだパスの先は部長へ。部長は、ボールをキャッチすると高く跳躍し、バスケットゴールへ叩き入れるようにシュートした。盛大な歓声とともに、ホイッスルが鳴り響いた。
その後、4試合を終え、62対61という得点差で栄至中学校の勝利に終わった。
喜びに沸く歓声に包まれながら、咲乃は揉みくちゃにされた。チームから荒い祝福を受ける中、神谷が咲乃に近づいた。
「ありがとう、神谷。おまえのおかげで助かったよ」
咲乃は自分が投げたボールは、神谷が必ず取るはずだとわかっていた。神谷はそれを確実にやってのけたのだ。普段は信用したくない相手だが、やる時はやってくれる。
「やっぱ、おまえを頼って正解だったわ。これを機に、バスケ部入ろーぜ」
神谷から軽くパスされたボールを、咲乃がキャッチする。咲乃は、爽やかに笑った。
「絶対にやだ」
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試合が終わると、咲乃は急いで制服に着替えた。
バスケの練習で、津田成海の家へ行く機会を失って3週間が経つ。ただでさえ全く信用されていないのに、これでは余計に不信感を持たれてしまう。
これから打ち上げだという部員達の誘いを断って、咲乃は昇降口を出た。外では予報になかった雨が勢いよく降っている。こんな時についてない。
咲乃はカバンを頭上に掲げると、雨の中を飛び出した。
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【神谷 亮】
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