いじめられ少女が腹黒優等生の一軍男子に溺愛されるまでの青春ラブストーリー【高嶺の君とキズナを紡ぐ】
「重田、テストどうだった?」
「やっぱ俺、数学がだめだなー」
「平均点より上だから良いじゃん。俺なんかギリギリだぜ」
「神谷はどうだった?」
休み時間になり、周りでは先ほど届いたばかりのテスト結果を互いに見せあっている。
わたしの数学のテストは10点だった。相変わらずの平均値以下の点数。クラスで3本の指に入るバカだ。まぁ、こんなもんだろうとはわかってたけど。
突然、胸の奥がざわりとした。なんというか、違和感を感じたのだ。
この問題だったら解けたような気がする。でも、いくら考えても解き方が浮かばない。
……何考えてるんだろう。こんなの解けるわけないじゃん。わたしは数学が苦手なんだから。
がっくり肩を落として溜息を吐いた。
これが現実なんだよなぁ。どうせ生まれるなら、美人になりたいなんて贅沢言わないから、もう少し頭のいい人に生まれたかったよ。
「篠原くん、テストはどうでした?」
「え?」
……え?
篠原くんの顔を見たまま固まった。本当に時が止まったのかと思った。自分の言動が信じられなくて、頭の中が真っ白だ。篠原くんが驚いた顔をして反応に困っている。
「……マ……チガエ、マシタ……」
隣に向けていた顔を、手持ちのタブレットにもどした。
や……。
やってしまっっったぁああああっ!!!!!????????
何やってんだよバカ?! なんで今、篠原くんにテストの点数聞いたの?! なんで?!! 全然喋ったことない人に、普通テストの点数聞く??!! 何で普段絶対やらないようなことやっちゃったの???!!! しかもよりによって篠原くんに!???? もう泣きそうだよ!!!! 逃げ出したい!!!! お腹痛い!!!! おうち帰りたい!!!!!!!
「篠原くーん、テストの結果どうだったぁ??」
女の子の声が聞こえたときには、わたしは教室から抜け出していた。
今日は何か変だ。
分からない数学が分かるような気がしてるし、篠原くんに気安く気に点数聞いちゃうし……気を抜くと、何をしでかすかわからない……。
教室を出たはいいものの、行く宛もなくトイレの個室に入って気持ちを落ち着けた。水道で手を洗ったあと、疲れと共に大きなため息を吐く。未だにやってしまった失態が、頭の中にぐるぐる渦巻いて離れない。
これからどんな顔をして教室に入ったらいいんだろう。絶対、篠原くんに気持ち悪がられてるよ……。別に、篠原くんはさっきのことを誰かに面白おかしく話すような人じゃないだろうとは思うけど、でも、わたし自身が恥ずかしい。これはもう、全く関係の無い時に不意に思い出して、全身を掻きむしりたくなるやつだ。一生残る黒歴史決定だ。
最後にひとつ大きなため息をついて、しぶしぶ教室へ戻った。
体育の授業は100メートル走だった。
男女に分かれて100メートルのタイムを記録していく。別にタイムなんか計らなくたって、わたしのタイムがクラス最下位であることはわかり切っている。このデブは予想を裏切ってくれないから本当に安心するよ。
わたしが走ると、周囲からくすくすと忍び笑いが聞こえてきた。お調子者でバカな神谷くんが「トンちゃんガンバ―!」と囃し立てるせいで、笑い声が無遠慮なものに変わる。
汗ダラダラにして、最後尾でようやくゴールを切った。ぜいぜいと膝に手をついて荒い息を繰り返していると、肺の奥でふひぇふひぇと変な音がした。わたし、死ぬんじゃないだろうか。
体育の目玉と言えば、篠原くんと神谷くんの100メートル走。篠原くんは細身の体型に似合わず、意外に運動神経が良い。このふたりは、いつも何かと競い合っている。一方的に神谷くんが勝負を仕掛けに行って、篠原くんは相手にしてないんだけど。でも何だか楽しそう。男同士のライバルは至高だ。
ふたりが位置に着いた。クラウチングスタートのポーズをとって、スタートの合図を待つ。先生のホイッスルが鳴り響く。力強い脚力で風を切る様に、篠原くんと神谷くんが走った。
女子達の黄色い声と、男子の熱い声援が混ざって盛り上がる。ゴールまでは一瞬で、いつの間にかふたりともゴールを切っていた。
勝負に勝ったのは篠原くんだった。それでもたったの3秒差。学年平均を見てもふたりの速さはダントツで、周囲が凄い凄いとふたりを褒めたたえている。
「自分の人生の主人公は自分だ」って言葉があるけれど、この世界の主人公は、きっと篠原くんなんだと思う。
わたしはあくまで脇役に過ぎない。主人公の記憶にすら残らない、名前すら出てこないモブ。
わたしはぼんやりと、周囲に囲まれて笑っている篠原くんを眺めて、そう思った。
「やっぱ俺、数学がだめだなー」
「平均点より上だから良いじゃん。俺なんかギリギリだぜ」
「神谷はどうだった?」
休み時間になり、周りでは先ほど届いたばかりのテスト結果を互いに見せあっている。
わたしの数学のテストは10点だった。相変わらずの平均値以下の点数。クラスで3本の指に入るバカだ。まぁ、こんなもんだろうとはわかってたけど。
突然、胸の奥がざわりとした。なんというか、違和感を感じたのだ。
この問題だったら解けたような気がする。でも、いくら考えても解き方が浮かばない。
……何考えてるんだろう。こんなの解けるわけないじゃん。わたしは数学が苦手なんだから。
がっくり肩を落として溜息を吐いた。
これが現実なんだよなぁ。どうせ生まれるなら、美人になりたいなんて贅沢言わないから、もう少し頭のいい人に生まれたかったよ。
「篠原くん、テストはどうでした?」
「え?」
……え?
篠原くんの顔を見たまま固まった。本当に時が止まったのかと思った。自分の言動が信じられなくて、頭の中が真っ白だ。篠原くんが驚いた顔をして反応に困っている。
「……マ……チガエ、マシタ……」
隣に向けていた顔を、手持ちのタブレットにもどした。
や……。
やってしまっっったぁああああっ!!!!!????????
何やってんだよバカ?! なんで今、篠原くんにテストの点数聞いたの?! なんで?!! 全然喋ったことない人に、普通テストの点数聞く??!! 何で普段絶対やらないようなことやっちゃったの???!!! しかもよりによって篠原くんに!???? もう泣きそうだよ!!!! 逃げ出したい!!!! お腹痛い!!!! おうち帰りたい!!!!!!!
「篠原くーん、テストの結果どうだったぁ??」
女の子の声が聞こえたときには、わたしは教室から抜け出していた。
今日は何か変だ。
分からない数学が分かるような気がしてるし、篠原くんに気安く気に点数聞いちゃうし……気を抜くと、何をしでかすかわからない……。
教室を出たはいいものの、行く宛もなくトイレの個室に入って気持ちを落ち着けた。水道で手を洗ったあと、疲れと共に大きなため息を吐く。未だにやってしまった失態が、頭の中にぐるぐる渦巻いて離れない。
これからどんな顔をして教室に入ったらいいんだろう。絶対、篠原くんに気持ち悪がられてるよ……。別に、篠原くんはさっきのことを誰かに面白おかしく話すような人じゃないだろうとは思うけど、でも、わたし自身が恥ずかしい。これはもう、全く関係の無い時に不意に思い出して、全身を掻きむしりたくなるやつだ。一生残る黒歴史決定だ。
最後にひとつ大きなため息をついて、しぶしぶ教室へ戻った。
体育の授業は100メートル走だった。
男女に分かれて100メートルのタイムを記録していく。別にタイムなんか計らなくたって、わたしのタイムがクラス最下位であることはわかり切っている。このデブは予想を裏切ってくれないから本当に安心するよ。
わたしが走ると、周囲からくすくすと忍び笑いが聞こえてきた。お調子者でバカな神谷くんが「トンちゃんガンバ―!」と囃し立てるせいで、笑い声が無遠慮なものに変わる。
汗ダラダラにして、最後尾でようやくゴールを切った。ぜいぜいと膝に手をついて荒い息を繰り返していると、肺の奥でふひぇふひぇと変な音がした。わたし、死ぬんじゃないだろうか。
体育の目玉と言えば、篠原くんと神谷くんの100メートル走。篠原くんは細身の体型に似合わず、意外に運動神経が良い。このふたりは、いつも何かと競い合っている。一方的に神谷くんが勝負を仕掛けに行って、篠原くんは相手にしてないんだけど。でも何だか楽しそう。男同士のライバルは至高だ。
ふたりが位置に着いた。クラウチングスタートのポーズをとって、スタートの合図を待つ。先生のホイッスルが鳴り響く。力強い脚力で風を切る様に、篠原くんと神谷くんが走った。
女子達の黄色い声と、男子の熱い声援が混ざって盛り上がる。ゴールまでは一瞬で、いつの間にかふたりともゴールを切っていた。
勝負に勝ったのは篠原くんだった。それでもたったの3秒差。学年平均を見てもふたりの速さはダントツで、周囲が凄い凄いとふたりを褒めたたえている。
「自分の人生の主人公は自分だ」って言葉があるけれど、この世界の主人公は、きっと篠原くんなんだと思う。
わたしはあくまで脇役に過ぎない。主人公の記憶にすら残らない、名前すら出てこないモブ。
わたしはぼんやりと、周囲に囲まれて笑っている篠原くんを眺めて、そう思った。