いじめられ少女が腹黒優等生の一軍男子に溺愛されるまでの青春ラブストーリー【高嶺の君とキズナを紡ぐ】
ep35 そしていつか来る日のために
「篠原くんっ、一緒にお昼食べない?」
「山口さん、何処に座るの?」
「神谷くんがどけばいいんじゃない?」
「あぁ? なんで俺がどかなきゃいけねぇんだよ。ふざけんな」
山口さんは、この学校では一番可愛いと評判の美少女で、インスタやTikTokのフォロワーは千人を超えると聞く。
そんな山口さんが、席のことで神谷くんと揉めているみたいだ。うちの学校では、お昼時間は友達同士で机を動かして食べて良い事になっていから、席の移動は自由なんだけど、自分の席を移動するのは大変だから、誰かの席を借りたいらしい。
まぁ、わたしには関係がないので、わたしはひとり前を向いて給食を食べることにする。
「諦めろよ山口、俺は腹減ってんだ」
「ごめんね、山口さん」
神谷くんが煩わしそうに手をひらひらさせた。篠原くんは申し訳なさそうに謝っている。
山口さんは納得いかないように眉を潜めた。
「津田さん、悪いんだけど席交換しない?」
「エッ?」
牛乳パックにストローをさしたたところで、突然山口さんに声を掛けられた。びっくりして見上げると、山口さんは可愛らしく笑った。
「……エッ……エット……」
「良いじゃん、お昼の間だけ。津田さんは私の席で食べて良いから、ね?」
あざとく両手を組んでお願いされてるけど、目が有無を言わさず「どけよデブ」と言っている。移動するの面倒くさいし本当は自分の席で食べたいけど、山口さんはクラス内カースト上位組に属するおしゃれ可愛い女子、山口組のボスだ。クラス内カースト最底辺のわたしが敵うはずもない。
「山口さん、そんな風に無理やり席を交換させたら可哀そうだよ」
暖かい日差しが指したような、柔らかい声が山口さんを窘めた。窘めたのは篠原くんだった。
「えーっ、でもぉー」
「そこは最初から津田さんの席なんだから、津田さんがどく必要はないよね。普通に迷惑だし、俺たちも申し訳がない」
篠原くんに諭されて、山口さんはしぶしぶ席に戻った。一瞬、山口さんに睨まれたけど。
わたしは慌ててお盆を持つと、席を立ちあがった。
「アッ、アノッ、山口さん、ココ、ドウゾ……」
「本当!? ありがとー!!」
山口さんと席を交換して、ようやく昼食をとる。他人の席で食事をとるのは、すごく気を遣う。机を汚さないように気を付けながら給食を食べた。
昼休みが終わって、ようやく山口さんがわたしの席を空けてくれた。そそくさと自分の席に戻る。やっぱり人の席って気を遣うし落ち着かないや。
「津田さん」
「エッ、アッア!!」
折角自分の席に戻れたのに次の授業は移動教室だ。「また後でな」と自分の机に愛着を感じていると、篠原くんから声を掛けられた。
「津田さん、さっきはごめんね」
「イ、イエッ! ベツニ、キニシテナイデス!!」
無駄に大きな声が出て、突っ伏して寝ている神谷くんが煩わしそうに呻いた。ごめん、睡眠を邪魔しちゃって。でも、そろそろ起きないと授業始まっちゃうよ?
「でも、嫌だったでしょう? 山口さんに今後あんなことが無いように言っておくから」
「イ、イヤッ、オキヅカイナク……」
そんなことを言ったら、わたしの方が山口さんに恨まれそう……。
「心配しないで。俺が嫌だからって伝えるから。津田さんに迷惑はかけないよ」
「ソ、ソウデスカ……?」
考えていたことが伝わってしまったのだろうか。こんなモブにも配慮を欠かさないなんて、よく、そこまで気がまわるなぁ。
篠原くんは優しいと思う。こんなモブにも、ちゃんと気持ちを察してくれる。頭もいいし、性格もいい。でも、なんでだろう。篠原くんて、いつもどこか寂しそうに見えるんだよな。
あんなにみんなに囲まれているのに、どうしてそんなふうに見えるんだろう。
「山口さん、何処に座るの?」
「神谷くんがどけばいいんじゃない?」
「あぁ? なんで俺がどかなきゃいけねぇんだよ。ふざけんな」
山口さんは、この学校では一番可愛いと評判の美少女で、インスタやTikTokのフォロワーは千人を超えると聞く。
そんな山口さんが、席のことで神谷くんと揉めているみたいだ。うちの学校では、お昼時間は友達同士で机を動かして食べて良い事になっていから、席の移動は自由なんだけど、自分の席を移動するのは大変だから、誰かの席を借りたいらしい。
まぁ、わたしには関係がないので、わたしはひとり前を向いて給食を食べることにする。
「諦めろよ山口、俺は腹減ってんだ」
「ごめんね、山口さん」
神谷くんが煩わしそうに手をひらひらさせた。篠原くんは申し訳なさそうに謝っている。
山口さんは納得いかないように眉を潜めた。
「津田さん、悪いんだけど席交換しない?」
「エッ?」
牛乳パックにストローをさしたたところで、突然山口さんに声を掛けられた。びっくりして見上げると、山口さんは可愛らしく笑った。
「……エッ……エット……」
「良いじゃん、お昼の間だけ。津田さんは私の席で食べて良いから、ね?」
あざとく両手を組んでお願いされてるけど、目が有無を言わさず「どけよデブ」と言っている。移動するの面倒くさいし本当は自分の席で食べたいけど、山口さんはクラス内カースト上位組に属するおしゃれ可愛い女子、山口組のボスだ。クラス内カースト最底辺のわたしが敵うはずもない。
「山口さん、そんな風に無理やり席を交換させたら可哀そうだよ」
暖かい日差しが指したような、柔らかい声が山口さんを窘めた。窘めたのは篠原くんだった。
「えーっ、でもぉー」
「そこは最初から津田さんの席なんだから、津田さんがどく必要はないよね。普通に迷惑だし、俺たちも申し訳がない」
篠原くんに諭されて、山口さんはしぶしぶ席に戻った。一瞬、山口さんに睨まれたけど。
わたしは慌ててお盆を持つと、席を立ちあがった。
「アッ、アノッ、山口さん、ココ、ドウゾ……」
「本当!? ありがとー!!」
山口さんと席を交換して、ようやく昼食をとる。他人の席で食事をとるのは、すごく気を遣う。机を汚さないように気を付けながら給食を食べた。
昼休みが終わって、ようやく山口さんがわたしの席を空けてくれた。そそくさと自分の席に戻る。やっぱり人の席って気を遣うし落ち着かないや。
「津田さん」
「エッ、アッア!!」
折角自分の席に戻れたのに次の授業は移動教室だ。「また後でな」と自分の机に愛着を感じていると、篠原くんから声を掛けられた。
「津田さん、さっきはごめんね」
「イ、イエッ! ベツニ、キニシテナイデス!!」
無駄に大きな声が出て、突っ伏して寝ている神谷くんが煩わしそうに呻いた。ごめん、睡眠を邪魔しちゃって。でも、そろそろ起きないと授業始まっちゃうよ?
「でも、嫌だったでしょう? 山口さんに今後あんなことが無いように言っておくから」
「イ、イヤッ、オキヅカイナク……」
そんなことを言ったら、わたしの方が山口さんに恨まれそう……。
「心配しないで。俺が嫌だからって伝えるから。津田さんに迷惑はかけないよ」
「ソ、ソウデスカ……?」
考えていたことが伝わってしまったのだろうか。こんなモブにも配慮を欠かさないなんて、よく、そこまで気がまわるなぁ。
篠原くんは優しいと思う。こんなモブにも、ちゃんと気持ちを察してくれる。頭もいいし、性格もいい。でも、なんでだろう。篠原くんて、いつもどこか寂しそうに見えるんだよな。
あんなにみんなに囲まれているのに、どうしてそんなふうに見えるんだろう。