いじめられ少女が腹黒優等生の一軍男子に溺愛されるまでの青春ラブストーリー【高嶺の君とキズナを紡ぐ】
 お姉ちゃん服着てるよ。良かった!

「夜食を届けに来たならさっさと寄越しなさいよ。冷めちゃうでしょ」

 流石コンマ1秒でわたしの粗を見つけ撃ち抜く狙撃手(スナイパー)なだけある。瞬時に二人分の夕飯を乗せたお盆を持っているのを見て状況を把握したようだ。

「邪魔しちゃいけないかな、と思って……」

 お姉ちゃんの言い草に不機嫌な口調になってしまう。こちとらお姉ちゃんの面子を考えて、いろいろ気を遣ったんだぞ?

「夕飯持って来てくれたんだから、『ありがとう』が先だろ。成海ちゃん、わざわざ持ってきてくれてありがとな」

 お姉ちゃんの肩口から顔を出した優斗さんが、無表情を柔らかくさせた。

 良かった、服着てるよ!

 わたしはリビングに戻ってテーブルに着いた。いただきますもそこそこにコロッケを頬張っているとお母さんが訝しむような顔をした。

「何よ、成海。そんなに急いで食べて。誰も取りゃしないわよ」

 思春期で色々ざわつきやすい年頃なんだよ、ほっとけ!
< 97 / 222 >

この作品をシェア

pagetop